第3話

 その店は、千東町の花街の中にあった。

その店で、彼の奥さんが働いている姿を知った私は、「不況が着たら真っ先に潰れてしまう仕事である。」と、彼に言った。

彼は、そんな私の注意には見向きもしなかった。

 

 その彼と仕事をしていたのは、川崎の宗像さんと、気弱な柳瀬君だった。

柳瀬君は、私が入試で落とされた東洋大学の三年生であった。彼の父親は、宝くじで四百万円を当てて、仕事を辞めてしまったらしかった。

 

 彼等三人と私の嫁とで、筑波山のドライブしたのが嘘のように思える。

私が一番油の乗っていた時期であった。私が調理と経理を担当し、出前の宗像さんと柳瀬君。

 しかし、最初の女性アルバイターのTMと私は、バブル崩壊をまともに受けてしまった。

佐々木さんに至っては、連帯保証人となり、松葉町のアパートでは住んでいられなくなってしまい、私から十五万円を持って夜逃げをしてしまった。

「社長、私は夜逃げをしなくてはならなくなってしまった。」と言って、辞めていった佐々木さん。

 

 調理師免許も取らず、調理が出来ず出前だけしていた宗像さんは、私より二歳上だったが、彼も哀れで、次の仕事はフォークリフトの運手をし、その職場も不況で潰れ、行き場がなくなった。

彼は私の店に来、棚のグラスの多さに気落ちして、

「社長!一番出前の多い時期なのに、どうしてこんなにグラスが残っているんですか?」と言って、アルバイターになるのを諦めて帰って行った。


 TMはその頃人形街の洋服屋でアルバイトをしていたが、やはり不況で、私と秋田の知り合いの日東電機という小さな会社で経理をすることとなった。

その頃から私と彼女は急接近していった。


 日東電機の社長は遊び人で、酒の付き合いが多く、一千万円のヨットを買い、顰蹙を買って、奥さんに逃げられてしまった。

六十五歳で肝硬変を患い、急に死んでしまった。

 その間に、私は彼の妹が開いていたライオンという御徒町の小さなスナックで一度会っている。

その日東電機の取締役、我妻さんとは、今も付き合っている。

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