第2話

西暦1887年。茶色のコートを羽織った通りすがりのおじさんは確かそう言った。

唯一答えてくれたそのおじさんはとても頭が良さそうで、如何にも文明開化という感じがした。

1887年。二葉亭四迷が「浮き雲」を発表され始めた年。

会ってみたい気持ちはあるけれど、どこに住んでいるのか分からない。

僕が唯一知っているのは宮城の志賀直哉ぐらいだ。生きているのか、産まれているのかすら分からない。せっかくの初タイムトラベルだから何かして帰りたい。とにかく行ってみよう。

一日とかからずに志賀家にたどり着いた。

どうやら、志賀家は東京に引っ越して来たらしかった。お父様が立派な方らしく、地元の人たちは殆ど知っていた。

志賀直哉は四歳だった。直哉君と大した話は出来なかったが、親切にしてくれたお礼にと紙を借りて手紙を書いて渡した。

門をくぐった時にはもうだいぶ日が落ちていた。時計の針を二時三十分に合わせる。

今度は計画を立てた後で使うようにしよう、そう決心してボタンを押す。

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