初夏
ベッドに染み込んだ不快な汗で目覚めた。
足早にシャワーを浴び、うちわを片手に
そうめんを茹で、麺つゆに氷を入れた。
窓を開けようと近づくと自動ドアのように開いた。
「いやぁ、今日は一段と暑いね」
「まあ、そうめんでも食べよ」
いつものように言葉を言い終わる頃には
もう食べ始めている。
「ズルゥゥウ。いゃあしみるねえ」
「おっさんかよ」
「かわいいピチピチのJKよ」
こっちを向いて高速でウインクをかましてきた。確かに顔は整っている。
くっきりとした二重に日焼けを知らないほどの白い肌。髪は艶のある黒髪で胸の高さまであった。背も高く、細身。
確かにそこは認める。
だが、性格はおっさんだった。
「普通のJKは1分でご飯は食べないし、ベランダから人の部屋には入りません」
「君、普通じゃないのが普通なんだよ」
雨音はたまにこういうことを言った。
こいういとき僕は言い返せなくなってしまう。
「それにしても、夏休みって本当にやることないよね」
僕が話題を変えると、いつも雨音はそれ以上何も言ってこなかった。
「うーん。そうだ!」
僕は嫌な予感しかしなかった。雨音のひらめきは大体、突拍子もないことばかりだったからだ。
「旅行へ行こう」
ほらきた。旅費に宿泊施設の予約に色々やることが多い。そしてそれら全てを僕に押し付けるのである。
「それなりにお金かかるけど雨音あるの?」
今時、バイトもしてない、一人暮らしの女子高校生に旅費を出す余裕なんてないだろう。
「あるよ」
いや、あるんかい…。
そして広島県への旅行が決定してしまった。
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