第18話大洪水
「どうせ私にはなにもできないのよ」
悲しくなってとうとうアリスは泣き出しました。
アリスの涙はとめどなく流れ出て滝のようです。すぐに工場の床が涙の水であふれました。
最初はしょうがないなー、という顔をしていたヌートリア先生とサル社長でしたが、体が涙の洪水でプカプカ浮き始めると、ちょっと慌て出します。
アリスは、
「こんなおとぎの国なんて、私はもういたくないな」という気持ちと、
「もうこことお別れしなければならないんだ」と思うと、ますます、ますます涙があふれてきました。
アリスの涙の洪水は、今では巨大水槽の上まで達する勢いです。
「このままだと、水槽の水ごと溢れ出すぞ! 逃げろ!」サル社長はそういうと、一番に逃げ出しました。ヌートリア先生も後に続きます。みんなもあわてて逃げ出しました。
やがて涙の洪水は巨大水槽も飲み込むと、マンホールからにわかにブクブクーっと泡が吹き出しはじめ、すぐに水は真っ赤に染まりました。
それでもアリスが泣きやまないものですから、真っ赤な水は海へ街へとあふれ出したのです。
真っ赤な水が巨大水槽からあふれて流れ始めると、とうとう巨大水槽はばらばらに壊れてしまいました。
そして世界はまたたくまに赤一色に染まってしまったのです。
太陽の塔さんも、なぜか空の龍さんも真っ赤に染まってしまったのです。
涙でかすんだ目でぼんやりその光景を見ていたアリスは、
「結局自分がおとぎの国をつぶした張本人だったのかもしれない」
そう頭に一瞬よぎると、さらに悲しくなってますます涙があふれてきたのでした。
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