第19話物語は始まる

「アリス! もういい加減にしてよね! ほんとめんどくさいったら!」とお姉ちゃんがコンビニの隣の小さな公園で言いました。アリスはベンチにふさぎ込んでますます大きな声で泣き続けます。

「あれ、どこの赤ちゃんかと思ったらアリスじゃないか」なんだか聞き覚えのある声がしました。

アリスは泣きながら顔をあげると、なんとそこにはルイス兄ちゃんが立っていました。アリスはもう、なんだかわからなくなってルイス兄ちゃんのそばに行って、

「マンホールが、マンホールが、ヌートリアが、ヌートリアが、わ〜〜〜ん」大きな声でしばらく泣き続けまました。

USJに就職したルイス兄ちゃんに会えると思って密かに楽しみにしていたのに急な閉園で会えないんだ、とあきらめてたのを思い出し、ますます泣き続けるアリスでした。

「USJのマンホールの下に巣を作っていたヌートリアが、信号ケーブルをかみちぎって、今日は急きょ休園になったんだけど、もうみんな知ってるんだね。さすがインターネットの時代だね」とルイス兄ちゃんが言うと、

「この子たちがルイスの可愛いガールフレンドね」ルイスの隣にはルイスと同じUSJの制服を着たお姉さんが言いました。


それから四人で近くのレストランに行き、アリスはソーダアイスをおごってもらいました。


アリスはようやく落ち着くと、これまであったことをルイス兄ちゃんに長々と話しました。

お姉ちゃんと制服のお姉さんはおとぎ話には興味なく、あまりに長い話だったので途中からお互い別の話を始めました。

まあアリスの話し方もあまり上手ではなかったですし、途中はしょったところもあるんですが、それでもルイス兄ちゃんは最後まで話を聞いてくれました。そして、

「アリス、キミはキミのために、いつか自分でそのお話を一つの物語にまとめるといいと思うよ。僕はそれをぜひ読んでみたいな」と目をキラキラさせて言いました。


アリスはおとぎ話はおとぎ話でも、そんな悪いもんじゃあないかもしれない、と気持ちが楽になりました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る