第16話卵

「勝手なことばっかり言って! もうイヤ、私帰る!!」とアリスは叫びました。

「アリス! ちょっと待つんじゃ。最後の手段じゃ!」とアリスのポケットにいたムカデじいさんが叫ぶとポケットからガチャポンのケースに入った卵を取り出して、

「いでよモンスター!!」と叫び、卵を投げました。会場は一瞬シーンと静まりかえります。

卵はうまいこと壇上のカピパラ首相の前まで転がって、ガチャポンケースが二つに開きました。すると卵はピシッと一ヶ所ヒビが入ったのです。

「ふ化するぞ!」

皆が驚いた顔をして見守る中、出てきたのは小さなヘビの赤ちゃんでした。


「あーびっくりしたなあ、うん」

「確かにモンスターです、ねえ」

「問題ない、問題ない」

カピパラ首相、カピパラ夫人、ヌートリア先生、サル社長はひょろひょろ動く小さなヘビを見て笑いました。


ところがどうでしょう。その時、にわかに空が暗くなりピカッと稲妻が光り、ドーンと大きな雷が落ちました。そしてゴロゴロっ、ゴロゴロっという雷の音に混じって地響きのような低い声がしたのです。

「アリス、ありがとう。私の卵を守ってくれて」

ドームの体育館の大きな扉に現れたのは巨大な龍でした。

龍は体育館の中に大きな頭を入れると壇上の赤ちゃんのところまで侵入してきました。

龍の生暖かい鼻息がカピパラ首相に当たります。

「ごめんなさい! ごめんなさい! もうしません! もうしません!」とカピパラ首相は必死に叫んでます。

そんなことには気にもとめずに龍は赤ちゃん龍をそっと口にくわえると、そのままゆっくり空に消えて行きました。


龍が去った後、

「こんな怖い思いをするんなら、私は南米に帰ります」と言ってカピパラ首相とカピパラ夫人は出て行きました。

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