第12話工場見学

「これからクラスごとに関西エンペツへ工場見学に行きます」ヌートリア先生の引率でバスに乗って見学です。

「カピパラ首相もご一緒しませんか?」とヌートリア先生が言うと

「あそこは汚いから行くのはイヤですね、ねぇ」とカピパラ夫人が言うと、

「あそこは危険だから、いやいや、汚いから、いやいやいや、とにかく次のスケジュールもぎっしりつまっているから行くのはやめときますよ、うん」と、カピパラ首相と夫人はそそくさと体育館から立ち去りました。


アリスは一番最初のクラスにまぎれこんで、いっしょに行くことにしました。


関西エンペツの工場は町の外れの河口の近くにある、とても大きな工場でした。

工場では生産ラインを一つ一つ見て行きます。いくつもの大きな部屋で、いろんな鉛筆が製造されていました。

そして赤鉛筆の原料だと言うマンホールは、以前は水族館でジンベイザメを入れていたと言う巨大な分厚いアクリルの水槽の水の中に沈んでいました。

マンホールからは赤いサビが泡とともにフツフツとわき出ています。

「きれいなもんやろ、この先百年は赤鉛筆作れるで」うれしそうにサル社長が説明します。


その巨大な水槽の部屋を出たところで、

「アリスさん〜」と聞き覚えのある声がしました。

ヘルメットをかぶり作業着を着てはいますが、全身の毛はボロボロでほぼ抜けている悲惨な姿は、

「あなたは、大食らい猫?!!!」全身緊張させて身構えるアリスです。

「まあ、そんなに警戒しないでくださいよ〜。腹減ってないときは普通なんですから~」

「もう話しかけないで! なんでここにいるのよ!」

「だって、ここの社員ですから」(!)

「あ、お父ちゃん」見学の小さな子猫が手を振ると、大食らい猫も笑って手を振りました。(!!)

それから大食らい猫は、大きなバケツを持って外に出て行きました。

アリスは何をするのか気になって後をつけて行きました。

大食らい猫はバケツに入った赤い水を海にぶちまけました。

「それはなに?!」

「水槽のヒビから漏れた水ですよ〜」

「ヒビが入ってるの?」

「もう何十年も前に作った水槽だし、何回か大地震もあって、修理しても修理しても水がちょっとずつ漏れ出るんですよね〜」

「危険なんじゃないの?」

「危険なんですけどね〜」

「海の水が汚れちゃうんじゃないの?」

「汚れちゃうんですけどね〜」そのあたりの岸壁や海はすでに真っ赤に汚れてます。

「そんな赤い水を海に捨てちゃダメなんじゃないの?」

「でも規則では下水道の水が汚れてなければ何も問題ないって書かれているから〜、こうしてるわけですよ」

「それってカピパラ首相と関西エンペツの社長が作ったっていう規則ね」

「ザル規則ならぬサル規則で〜す。なんせサルだけに〜」大食らい猫は上手いこと言った?という顔をちらっとしました。アリスには笑えませんでしたけど。


「規則通りにできてるんだから、大丈夫やね」帰り際にサル社長に水漏れの件を質問しても案の定、そんな答えが返ってきただけでした。

「問題ない。問題ない」とヌートリア先生は笑ってます。


工場見学が終わるとアリスと生徒達はできたてのきれいな赤鉛筆をもらって帰りました。

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