第11話全校集会
中央小学校に行くと、ちょうど生徒達がゾロゾロと大きなドームの体育館に入って行くところでした。もちろん生徒達は子猫や子犬や子ネズミ達なのですが、もうアリスはなんの違和感も感じませんでした(そうでしょうとも)。ちゃっかりその中にまぎれてアリスも体育館に入りました。
「静粛に」「私語をやめてください」
「これから名誉校長のカピパラ首相から大切なお話があります。私語をつつしむように」
壇上に大きなカピパラ首相と小柄なカピパラ夫人が上がってきました。
「カピパラだ」その独特のおっとりした表情に、思わずアリスが嬉しそうに言うと、隣の子が、
「カピパラではありません、カピパラ首相です」と言いました。
「オホン」カピパラ首相はせき払いをしてから「来学期から授業に使うエンピツは黒い鉛筆をやめて全て赤鉛筆にします」と言いました。
「いや、すばらしい」と声がしパチパチと拍手が上がりました。見るとあのヌートリアではありませんか。続いて先生達も「すごい。すごい」と拍手しはじめます。それを見て生徒達もそれに続けて拍手をしました。体育館全体に拍手がわき上りました。
拍手が一通りやむとアリスが手を上げて、
「どうして赤鉛筆にするんですか?」と尋ねました。先生や生徒達は一瞬ギョッとしました。
「赤鉛筆は実に環境にやさしくて、安くできるからみんなのためになるんですよ、うん」とカピパラ首相が落ち着いて答えました。
「実は関西エンペツが赤鉛筆を沢山作る予定なのよ、ねぇ」とカピパラ婦人は言いました。
「どうして沢山作るんですか?」と続けてアリスは手を上げて質問しました。
「沢山作ると安くできるし、まあ関西エンペツの方針じゃな、うん」とカピパラ首相。「関西エンペツの社長さん、そうでしたな?」なんとそこには社長さんも来ていたのです。
「先週、赤鉛筆は新聞に印つけるのに最適だからたくさん作って欲しいってカピパラ首相から頼まれたのがはじまりだな」と関西エンペツのサルの社長は言いました。
「ヌートリア先生、これ議事録に書かなくていいからね」とカピパラ首相。
「そこのヌートリアが持って来たマンホールを使って赤鉛筆を大量に作るのね」とアリスが言うと、
「おお、あんたよく知ってるなぁ」感心したようにサル社長が言いました。アリスは、
「昔マンホールで赤鉛筆を作ると大変なことになったってムカデのおじいさんが言ってましたよ」
すると会場がちょっとザワザワしました。
「ムカデじいさん? あの死に損ない、余計なことを言いよって」とサル社長。
「いやいやお嬢さん、それはずーっと昔の話ですよ。今では規則もきびしくなって安心安全に作れるんですよ、うん」とカピパラ首相。
「なんせその規則はカピパラ首相と関西エンペツさんとで考えた厳しい規則ですから、ねぇ」とカピパラ夫人。
「それは逆に甘くなってるんじゃないんですか?」とアリス。
「専門のことは専門家にまかせるのが一番ですよ、うん」とカピパラ首相。
「シロウトは黙ってな」とサル社長
「問題ない。問題ない」とヌートリア先生。
こりずにアリスはまた手を上げて言いました。
「赤鉛筆だと消しゴムで消せないから不便だと思います」とアリスが言うと。
「せやな」とどこからか声がしました。
「白い修正液もいっしょに使うといいでしょうね、うん」と落ち着いてカピパラ首相。
「修正液も売れていいわ、ねぇ。関西エンペツさん」とカピパラ婦人。
「修正液は高くても買い手がつきそうやな」とサル社長。
「それじゃあよけい高くなるじゃない?」とアリス。
「いやその代わり消しゴムは買わなくていいから、とんとんでしょうね、うんうん」
「なるほど〜」と会場から声。
「問題ない。問題ない」とヌートリア先生。
負けずにアリスはまた手を上げて言いました。
「赤鉛筆はテストの採点のときに分からなくなりますよ?」
「採点はしません」とカピパラ首相がきぜんとして言うと、
「やったぁ」「賛成」「賛成!!」とあちこちから声が上がり、全校集会はそこで終わりました。
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