第4話激安スーパー
しばらく行くと明るい通りに出ました。
「らっしゃい、らっしゃい。安いよ安いよ」おばさんの声とにぎやかなざわめきが聞こえてきました。「激安」と書いた紙がここかしこに貼ってあります。いろんな食料品が山のように並べられ、人(動物?)がたくさん集まっています。
「らっしゃい、らっしゃい。安いよ安いよ」おばさんと思ったのはエプロンをしたタヌキでした。
でもそれは大した問題ではありません(ほんまに?)。アリスは時々おつかいに行くので確信を持って言いました。
「おばさん、そんなに安くないんじゃないの?」これがアリスにとっては問題だったのです!
「何言ってんだい、安いよ安いよ。日本一安いよ。いや世界一安いよ」
「世界一!? ウソよ、家の近くの国道沿いのスーパーの牛乳はこの半額くらいよ」
「そりゃあんたニセモノの牛乳は安いかもしれないけどウチのはホンモノ。安いよ安いよ、世界一安いよ」
「低脂肪乳じゃなくて牛乳と比較して安かったのよ。こんなの買って帰ったらお母さんに怒られるわ」
「何言ってんだい、どこより安いのがウチの売りなんだよ。商売の邪魔しないでおくれ! どこよりも安いよ!」
「もう絶対ウソだわ!」
「ホントに嫌な子だね、ウソじゃないさ。「私が」売っている食品の中では世界一安いってことでウソじゃないよ~。安いよ、安いよ! 当社比で安いよ!」
「それは屁理屈ってやつね」
「屁理屈でも理屈が通ってるんだからいいんだよ。ガキはあっちへ行っとくれ」
「ガキじゃないです」
「りっぱなガキだよ」もうまわりの人(動物?)たちはアリスをガン見してます。
「元気があっていいねぇ」見るととても小さなネズミのおばあさんが微笑んで立っていました。
ネズミのおばあさんを見て思い出しました。
「おばあさん、ヌートリアはどこにいるか知ってますか?」だってヌートリアはネズミ目(同じネズミの仲間ってこと)なんですもん。自慢したいのを抑えながら聞きました。
「さてねぇ。最近来たらしいのは聞いてるけど、私が若いころにはどこにもいなかったけどねぇ」
「そっか最近なんだね」たしかにヌートリアは最近の外来生物だって学校で教わったのをアリスは思い出しました。
「でも、物知りのムカデのじいさんなら知ってるかもしれないよ」
「む・か・で・の?」
「山手の神社にいるから行って聞いてごらん」
「あ、はい」どうしよう。いやだな、と思いましたが、成り行き上仕方ありません。
「さっさと失せなガキ!」とタヌキおばさんの声に押されるように
「ふん、こっちからバイバイだわ! ありがとうおばあちゃん」と言ってアリスはかけだしました。
ムカデのおじいさん? いるわけないし。と思いましたが、……いるんだろうな、とも思いました。
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