第2話アリス、落ちる
急に足元の地面がなくなって、無重力で落ちていくのをアリスは感じました。
そうです、アリスは穴に落ちてしまったのです。
でもなかなか底には着きませんでした。
見上げると暗がりの中、明るい丸い穴がどんどん小さくなっていくのが見えます。
「そうだ、きっとヌートリアが持っていた丸いのはあそこのマンホールのふただったんだ!」と理解できた気がして、こういう事態ではありますが、ちょっと誰かに教えたい気になりました。
「でもヌートリアにとってはマンホールのふたは重すぎて運ぶのは無理なのではないかしら?」
「だとするとあれはマンホールではないのではないかしら?」とか、
「なによりヌートリアは訓練したら立って歩けるようになるのかしら?」とか、
テレビの動物番組や本で知っていることをいろいろ思い出して、
「いや、そもそもあれはヌートリアではなかったのかしら?」なんてことを考えていましたが、こんな事態の時にそんなことを考えている自分が腹立たしくなりました。
「わけわかんない、私」
そう思った瞬間バシャッ! と音がしました。
どうやらアリスは浅い水たまりに落ちたようでした。
幸いどこも痛くはありませんでしたが、服が下着まで濡れてしまったので気持ち悪くて仕方ありません。そして、
「すぐ乾かないかな、またお姉ちゃんにめんどくさがられる」と心配になりました。でも今、目の前にお姉ちゃんはいないので、「まぁ帰るまでに乾けばいいか」という気になりました。
「マンホールはなぜ丸い、マンホールはなぜ丸い、それは……」と遠くで歌うのが聞こえます。
「あの唄はきっとヌートリアが歌っているに違いない」アリスはそう言うと暗がりの中、声のするほうに歩いて行きました。
服が濡れていることはもう気になりません。
そしてヌートリアが唄を歌えるのか?ということも気になりませんでした。
もうすでにそういう不思議な世界になじみつつあるアリスでした。(ちょっとヤバイんやないでしょうか?)
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