アリス@21世紀初頭の関西
秋元なおと
第1話USJへ
小学五年生のアリスは中学三年のお姉ちゃんと二人で、電車に一時間以上も乗って念願のUSJに遊びに行きました。
USJって超有名な遊園地です。
クラスの友達が行くたびに楽しそうに話すのを何度も聞いていたので、期待も半端なかったアリスでした。
ところがなんとUSJは事故があったとかで開園以来初の緊急休園になっていました!
「信じらんない!」二人は仕方なく近くのコンビニの前でちょっと高めのアイスクリームを食べて、自分たちの不幸を少しでも忘れようとしていました。
お姉ちゃんはアイスを食べながら夢中になってケータイで何やら書き込んでは読んで、書き込んでは読んでを繰り返しています。きっと今日のことをみんなに教えてるんだと思います。「サイテー」とかつぶやくのが聞こえました。でもアリスにはその画面は見せてもらえませんし、なにより自分のケータイは持っていません。
アリスはアイスも食べ終わり、ちょっとつまらなくなって、なにかひまつぶしができないかなときょろきょろあたりを見回しました。
コンビニのすぐ隣にはベンチのある公園というか小さなスペースがあって、そこから川が見えます。川と言ってもコンクリートに囲まれた水量の少ない小さな川です。そして浅い水底にたまった砂地の端にはいろんな植物がわんさか生えていました。
その植物の間からスズメが何羽か見え隠れしているのを見つけたので、動物好きのアリスはしばらくスズメたちを見ていました。
するとちょっと大きめの動く影が見えたんです。猫よりちょっと大きめで茶色の毛に細長い尻尾そして愛嬌のある顔。アリスにはそれがヌートリアだとすぐにわかりました。
「かわいい~」お姉ちゃんのところに急いで戻って「ヌートリアがいるよ」と興奮気味に教えますが、お姉ちゃんは、
「ヌートリア? なにそれ」とスマホの画面から目を離すことなく興味も無いようで「まじっすか」を二度つぶやくのが聞こえました。
仕方なくアリスは一人で川に戻りましたが、すでにヌートリアの姿は見えません。
どこに行ったんだろうと探していると、水底の砂地に規則正しい小さな足跡が点々と付いているのを発見したんです。
うれしくなってその足跡をたどって行きました。
しばらく足跡をたどって行くと橋の陰になったところに横穴があって、その近くで動く影を見つけました。
よく見るとなんとヌートリアが丸いものを転がしながら立って歩いているではありませんか! 立って歩いてるだけではありません、何やら服を着ているように見えます。
「飼育されて訓練されたヌートリアかしら?」とアリスは思いました。
警戒しているのでしょうか、ヌートリアはちょっと止まって後ろをチラっと振り返り、そそくさと横穴の奥へと入って行ったのでした。
「あの丸いのタイヤじゃなかったわね、なんだっけ?」
とアリスは追いかけようと走り出しました。すると急に体がガクンとしたかと思ったら目の前が急に真っ暗になりました!!
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