漂う

揺らめく川面。

老人が竹竿ひとつで古い舟を自在に操る。

時に川底を突き、時に川面に竿を浸け、小舟は老人が思うがままにその身を動かす。

手繰りの網の漁でなにを捕るというのか。


揺らめく川面を陽光が照らす時、何処に潜んでいたのか、雁の大群が空を染める。

朝は東に、暮れは西に、暁の太陽と黄昏の太陽を目指し群をなし、編隊を組む。

群からはぐれた雁一羽。

彼が目指すのは群か太陽か、それは判りはしない。


されど、お天道様に背を向けず、一心不乱に太陽を目指す彼の姿は群の雁達と変わらない。


老人は微笑む、網にかかる魚の姿を見て、微笑む。

もう何年もこの変わらぬ生活を続けているのだろう。

年期の入った古い小舟はキィーキィーと聴こえぬ音をただ鳴らす。


日は暮れる。

時は流れて、川面も流れ、舟は流れに漂う。

漂い、迷い、生きていく。


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