ユクランケカムイの使い

虫達の囁き声が響く森

梟が小さく鳴く森


漆黒の空の中

月が神々しいまでの光を放ち

森の隙間に灯りをともす


静寂さは涼しげな霧と共に増し

ざわめきは彼の者が近づく度に増す


森を小さく揺らす音

細く、しかし力強く草を踏む音


イカリ立つ角は何者も屈伏させてきた証

対照的に憂いを帯びた哀しげな大きな目は何者にも優しくしてきた証


自然は時折、神と見間違う程の者を造る。

自然の中で、奇跡とも言える程永く生きてきた鹿


彼の者の姿に動物達は道を譲る

無駄のない肉体

それは機能美と言える程に磨きあげられた肉体


豊かな腿は艶やかに月の光を弾き

逞しい体は威圧感を通り越し、威厳を与える

極め付きに肥大化した角は宛ら王冠のごとし壮麗さを魅せる


彼の者を例えるなら森の若き神


自然と永く生きてきた者


今宵もまた、森を静かに歩き続ける


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