第十四話 「異世界最強となった村人」

「さあ、私に乗ってください!」


気が付くとオーロラは、自らの体を変形させて大きなドラゴンになっていた。

大きさは、前に俺が殺されたレッドドラゴンの2倍程ある。

具体的に説明すると、日本の一軒家程の大きさぐらいだろう。

それに、口の形状のせいか声は機械音見たいな籠った感じに聞こえる。


「ほら、ユウタ! 早く乗りなさい!」


早々、ドラゴンにまたがっているバカ女神、

俺はドラゴンに一回殺されてんだ。無論、殺された事のあるドラゴンに乗るというのも躊躇ためらいいがある。


「さあ、ユウタさん! 早くしないと、冒険者と騎士たちが来ます! もし、捕まったら魔王軍の一味と勘違いされてユウタさんの異世界ライフがズタズタになってしまいますよ!」


確かに捕まるのは危険だ。それに、俺の仲間には本物の元魔王軍幹部がいる。

捕まったら、確実に殺されるだろうな。


「ああ! クッソ! なんで、ドラゴンなんかになりやがった!」

「すいません! でも、皆さんを乗せれる生命体をドラゴンしか思い出せなくて……」

「ユウタァ、早くゥー」

「分かってるよ!」


俺は、少々……いや、かなり怯えながらアルレナの肩に捕まった。

そんな、俺の手をアルレナは顔を赤くしながら見つめている。


うん、可愛いと言いたい所だが、今の俺にそんな事言っている余裕は無い。


「いいぞ! オーロラ!」

「はい!」


オーロラは、そう言うと大きな翼を羽ばたいてゆっくり浮上していく――

数秒後には、近くにいたスライムが蟻の様に小さくなっていた。


「おお! すごいわ!」

「おい、はしゃぐなマリア! 落ちるだろ!」

「フフフ……女神はこの高さから落ちても死なないのよ!」

「そうか、じゃあ落ちてみろ」


俺はマリアの肩を掴むと、左右交互に大きく揺らしていく。

それに対し、マリアは涙目で必死になりながらアルレナに抱きついている。


「う、嘘! 嘘よ! ごめんなさい、だからやめてえええぇぇぇ! 本当に落ちちゃう!」


あれ、なんか面白いぞ……

こう、もっと勢い良く!


「やめてぇぇぇ!! ごめんなさい! 許してぇぇぇ!!」

「しょうがねぇなあぁぁぁ!!」

「ユウタァ? なんで、マリアの肩触ってんのォ?」


……おい、待てアルレナ。


さっきまでの、赤面はどこかへ消え冷たく冷え切った目で見つめてくる。


「すいません、もう二度と触りません」

「あ、あの! ユウタさん、そろそろ限界なので、着地していいですか?」

「ああ、いいぞ!」

「ええ、もうおしまいなのー?」


やや、残念そうなマリア――このバカ女神はドィベニーランドのアトラクションとでも思っているのだろうか?


「では、街の西地区 ディオールに着地します! 少し揺れるので、しっかり捕まっていて下さい!」

「ああ」


その後、少々揺れたが無事地面に降り立つ事が出来た。



※※※※※※



――次の日、


ディオールの宿に宿泊した俺は、辺りをブラブラ歩きながら散歩していた。

空は、いつも通り快晴で町民も元気よく暮らしている。

あれ? どこかで見た顔が俺の視界に入って来た。

あれは、確か服屋のおばさん……じゃなくて、アローラさんだ。

なんだろう。どこか心配気な表情を浮かべいる。


「あ、あの。どうかしました?アローラさん」

「あ! あの時の方かい?」

「はい、そうですユウタと申します」

「それより、大変だよ! マーヤの姿が無いんだ!」

「え!? マーヤが? まさか、あの犯人が?」

「その可能性が高いね……」

「役所には?」

「いったよ、けどね取り合って貰えなかった」

「やはり、そうですか……」


前回の少女、失踪とかなり似ているな……

”役所が取り合ってくれない”、”急に姿を消した”

手口が前回とかなり似ていると思う。――これは、役所が絡んでいる可能性もあるな。


「私は、どうすればいいんだい……」


アローラさんは、そう言うと瞳から大粒の涙を流し泣いている。


「あ、あの! 俺がどうにかします!」

「え……? で、でも。アンタ、村人だろ? 最弱職のどうこうアンタがどうこう出来る話じゃあないよ……」

「いやいや! なめられたものですね……まあ、待っていて下さい!」


俺はそう言い残し、その場を後にした。

――その後、俺はすぐさま宿に戻り、オーロラの部屋のドアをバンバン叩いていた。


「オーロラ! 早く! 早急に!」

「ちょ、ちょっと! 待って下さい! まだ……服が……」

「ああ! もう、入るぞ!」


そう言って俺は勢い良く部屋のドアを開けた。

そこには、白い肌、純白の下着をつけたオーロラが……


あ……れ?


「キャアアアァァァ!!」

「おい! 待て待つんだオーロラァァ! このままじゃあ!」

「どうしたのオーロ――……」

「どうしたのおォ?」

「いや、これは……その……ちょッ! 待て、アルレナ! その短剣何に使うんだ? おい」

「正座」

「はい!」


俺は素早く正座になり俯いた。

それに対し、オーロラは顔を真っ赤にして涙目で俺を見つめている。


そんな目で見るのはやめてくれ……。


「死ぬ覚悟できたァ?」

「おい、待て! 最後に、一言いわせてくれぇ!」

「なに?」

「こ、これは! 不可抗力だ!」

「わかったァ。じゃあ、マリアーユウタの腕をこの縄で縛って……」

「はい! アルレナ様!」


立派な敬礼をし、マリアは俺の腕を抑えみるみるうちに縛り上げていく、


――コイツ、もし俺がこの後生きていたら絶対に殺してやる……。


「いっやあああぁぁぁ!!」


その、叫び声は宿全体に響き渡る――。

宿の客は、人間が感じる死の恐怖を全身で感じていた。


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