章末 「”ステファ”」

どうにか俺は生きていた。

あの後、身ぐるみはがされ……。


言いたくない……! こんな、俺の様な美男子の乙女心にあの人達は傷を負わせたの!

酷いわ!



「それで、ユウタさん。私に用があったんですよね?」

「あ、はい。そうです……」

「それは、一体?」

「あの……最初に聞きたい事があって、俺って最強なのか?」

「あ、それがですね……ユウタさん」


部屋は胸の鼓動でさえ聞こえそうな程、静まり返っていた。

そして、オーロラは紅の髪の毛を少し揺らして、ゴクリと唾をのみ口を開いた。


「ユウタさんは、”ステファ”です」

「ステファ? なんだそれ?」

「この世界において、最強そして最弱の役職――それが、ステファです」

「最強で最弱……?」

「はい」


オーロラは、冷静かつ淡々と話を進めていく。

何だろう、嬉しい様な悲しい様な、そんな不甲斐なさが俺の体を駆け巡る。

空は葵く、いつも通りの空。

だが、俺の見る空は違っていた。”夢””希望”み満ち溢れた空――。


「ど、どういう事だ?」

「つまり、ユウタさんは異世界最強です。ですが、役職は異世界最弱の役職――村人」

「俺が、最強?」


――この時、俺はオーロラが淡々と発していく軽い言葉が物凄く重く感じられた。

この時、この瞬間から俺は”世界最強”となった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る