第十三話 「新しい仲間 オーロラ」


「お願いします! ユウタさん! 私をユウタさんの仲間に……」

「しょうがないですねぇーいいで―――」


あれ?やっぱり、アルレナが俺を睨んでいる。

先程、処刑などと抜かした俺だが……これは、一発で殺してくれないやつだな。

じわじわと、ゆっくり殺していくんだ。楽になるまでその苦しみに耐えながら


「ユウタァ、だめだよねェ?」

「はい、無理です」

「ええ!お願いです!ユウタさん――なんなら、今にでもご奉仕を!」


アルレナによって閉ざされた仲間と言う称号を、体で買おうとしているオーロラさん、

ついに頭がいかれた様だ。



結局、アルレナの了解を得て、

街の外にある平原で、実力テストを行う事にした。

オーロラは、アルレナが定めた基準よりも上だったら見事仲間に、そしてアルレナが定めた基準よりも低かった場合は、もう二度と俺に近づかない事と、仲間になる、と言う話は無かった事になる。


「ユウタさん見ててください! 」

「お、おうー」


オーロラは、やけに自信満々だ。


この平原は、始まりの街が近くにある為、”始まりの草原”と呼ばれている。

低レベルモンスターばかり発生し特に、スライムが多いらしい。

春先になると、スライムが大繁殖し畑を荒らすので、ギルド所属の冒険者がスライム討伐に駆り出される。


で、現在春先――

草原いっぱいに、広がるスライムの群れ。遠目から見ると綺麗で、まるで海の様に見える。だが、近付くと気持ち悪い程いるので、いい光景とは言い難い。


「オーロラ! いっぱい、来たわよ! 」

「はーい!」


オーロラがスライムを一掃する為、マリアがスライムをこちらへ引き連れてくる。


作戦はこうだ。


マリアがスライムを挑発→スライム怒る→マリアがスライムを引き連れてくる→オーロラが一掃(おわり)


これだけだ。


それと、今の時期になるとギルドで態々スライム討伐クエストを受ける必要がなく、倒した分の魔石をギルドに持っていけば自動的に変換してくれるらしい。

まあ、こんな雑魚モンスターを討伐するのは冒険者だけぐらいで、街民は勝手にしろ!見たいなオーラを放っている。


「お、おい。 オーロラめちゃくちゃ来たぞ!」

「わかってます!」

「本当か!?」

「はい! まあ、見ててくださいよ!」


オーロラは、俺にそう言うと猫の姿から魔法使いのお姉さんの姿に変化した。

瞳は紅に染まり、髪の色も瞳同様紅に染まっていて左手には杖を構えている。

そして、こちらに迫って来ているスライムの方を向き、魔法の詠唱を始めた。


「”炎の精霊よ、その姿を成し今、我の元に現出せよ、闇に染まりし爆炎よ、破壊神 アーティファクトが現存せし、禁断の炎魔法を今ここに現出せよ” 『フレイムニュークリアエクスプロード』!!」


――その瞬間、スライム達が爆発と共にぶっ飛び、それと同時にマリアもぶっ飛んだ。

俺は自身のからだで、そのただいまれない魔力を感じた。


「やっべー!」

「嘘、でしょォ?」


あのアルレナでさえ口を開け、驚愕したまま固まっている。


「ちょっと! オーロラ! 私、死ぬところだったじゃない! 」

「あ、ごめんなさい。マリア」

「はァ……」


溜息をついたのはアルレナだ。

自らの瞳を尖らせながら、鋭い目でオーロラを睨んでいる。


「ユウタ……コイツ、化物ォ」

「ッ!? ちょっと! 酷いですよー!」

「ああ、間違いない。化物だ」

「ユウタさんまで……!?」

「なら、いいよな? アルレナ」

「知らないィー」

「だそうだ、オーロラ」

「え、え? ダメって事ですか?」


いや、察しろよ。


「いいや、歓迎だ! 大歓迎だ!」

「ほ、ほんとに!? 」

「ああ」

「やったああああ!」

「良かったわね、オーロラ」

「あれ、お前生きてたのか……」

「待って、ユウタがちょっと悔しがってるのは何で!? 説明して!」

「ああ、うるせェバカ女神」

「はい……」


マリアは、しゅんとし目尻に涙をためながら、俯いた。

そして、アルレナが何かを見過ごした目で俺を見つめている。


「ねェ。ユウタ……今の魔法は、炎属性最強の魔法なんだけどねェ。ちょっと、魔法詠唱してみて」

「え、え? いやいや、無理無理俺村人だしレベル1だし、魔力ゼロだから」

「いや、ユウタの魔力は無いけど、他のエネルギーを感じる……」

「ま、まさか……アルレナさん。?伝説と呼ばれる……」

「うん、可能性が高い」


俺とマリアを除いて良く分からない話が進められていく。

二人、首を傾げ聞いているのだが、アルレナとオーロラの話は一切理解できない。


「あ、あのー」

「「はい!?」」


なんか、目が怖い!


「俺がなんかしたのか?」

「なんかしたのか!? 馬鹿ですか? 本当に馬鹿なんですか? もしかしたらユウタさん、一億年に一人の存在なんですよ?」

「何故話しかけただけで、バカと言われなきゃいけないんだ……一億年に一人?」

「ど、どういう事? 私にも教えて!」

「黙れェ、泥棒猫」


マリアはというと、口を開いた瞬間アルレナに撃沈されていた。

それで、いじけたマリアは俺の木の棒で、地面に丸を書いている。


「ちょ、ちょっと待ってくれよ! どういう事なんだよ!?」

「はァーユウタ。異世界から来たでしょ?」


……あれ、なんでばれているんだ?

一度もアルレナに俺が転生者だという事は言っていない筈なんだけど、

また、マリアか? でも、この流れからしてマリアが言った可能性は低い。と言うか、無いだろう。


「そ、そうだけど。なんで、わかった?」

「それぐらい分かるよォーだって、この世界のエネルギーじゃないもん。ユウタの中に眠っているエネルギーは」

「ユウタさん……転生者だったんですね……」

「いや、お前女神だろ」

「め、女神でも分からない事もあるんです!」

「あ、はい。そうですか……俺の中に眠るエネルギー? なんだそれ?」

「なんか、酷い……てっ! そんな、話してる場合じゃありません! と、取り敢えず魔法の詠唱を!」

「え? あ、はい」

「ユウタァー早く!」


だから、目が怖いよ二人とも!


「了解、えーと。ちょっと待て、覚えてるわけねぇだろうが!」

「ああ、そうでした」


オーロラは忘れていた事を思い出したかの様に、慌てて近くにあった木に手を当てた。


「”クラフト”!!」


オーロラがそう唱えた途端、木の中から紙切れが一枚現れた。

俺は、聞いた事も見た事も無いがアルレナもマリアも全く驚いていないのを見ると、上級魔法では無い様だ。

オーロラは、若干”クラフト”を見て驚いる俺を見ると、先程木から取り出した紙切れを手渡し、口を開いた。


「この紙に書いてある文章を音読してください」

「これ?ですか?」

「はい、そうです。この紙切れは、一億年前に先代”ステファ”が書き残したと言われる、魔法の詠唱文です」

「”ステファ”? なんだそれ?」

「”ステファ”とは、役職の中で最上位、そして最高幹部とされている役職です。その、力は勇者の力をしのぐとも言われています」

「まじで?」

「マジです」


やっべええええぇぇぇ!なに、何この流れ! ――実は俺最強だった説?

ヤバイ、にやけてきた。


「わ、わかった。じゃあ音読するぞ」

「はい」

「”炎の精霊よ我に力を”」


俺が紙に書かれていた文章を音読した瞬間、凄まじい爆音と共に、俺含む全員が10メートル程ぶっ飛んだ。

そして、先程まで緑豊かな草原が一瞬にして焼け野原と化した。


「コホコホ! ユ、ユウタさん……逃げましょう!」

「なんで!?」

「そんなの、こんだけの爆発起こして何言ってるんですか!! 」


ああ、そうか。

これだけの爆音、いくら町から離れていても確実に聞こえるだろう。

無論、今の音を聞いた冒険者や騎士が必ず駆け付ける筈だ。


「そ、そうだな」

「ユウタァ、距離考えて……」

「いや、無理だろ! 今のが初めてだぞ、魔法使ったの!」

「ちょ、ちょっと!ユウタ、何してんのよ!」

「いや、待て。俺は、頼まれたから紙に書かれている文章を音読しただけなんですが、なぜこんなに叩かれなきゃいけないんだ?」



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