第十話 「始まりの街 誘拐犯」


「――あれは、数日前の事だったよ。いつも通り、店前で仕事をしていたこの子の友達がとある男の物にされちゃってねぇ。またそれが、悪質な男だったもんで……一人飽きたらまた一人と女を変えてわ捕まえを繰り返していたらしいのよ」


そう、冷静かつ丁寧に物事を伝える女性――


「それは、酷いですね」

「ええ、まったくよ。で――まだ続きがあるの、そのマーヤの友達が数週間間前に姿を消して……で、親が全力で探しても見つからなく。結局最後は、役所に捜索依頼出したらしいんだけど――」

「――だけど?」

「全く取り合ってくれ無かったらしいの……そして、数日後。奴隷商人がその子を連れている所を親が発見して、すぐさまその奴隷商人にお金を払って取り戻したらしいんだけど――その子、何をされたのか、何を言われたのか何も言わないのオマケに家に閉じこもってしまって……」

「そ、それは……酷い」


かなり酷いな……それだけの事があったのなら、横に美少女を連れて歩いている俺を見て勘違いするのも無理ないだろう。


「で、でも! この方はそんな酷い方じゃないわ!お母さん!」

「ああ、分かってるよ……この方は悪い人じゃないね。ごめんよ、さっきは」

「いえ、大丈夫ですよお気になさらないで下さい」


――俺は、笑顔でそう答えた。

ごめんなさい……先程は心の中でババァとか失礼な事を言ってしまって……心より反省しています。


一応、俺も謝る事にした。


「アンタいいやつだね。私はアローラだよ覚えておくれ」

「私は、マーヤです!」

「分かりました、僕もここ数日はこの街にいる予定です。よろしくお願いします」


「「こちらこそ!」」


――そうして、俺とアルレナはお店を後にした。


「ねェ。ユウタァ」

「なんだ?」

「犯人、ユウタじゃないよねェ?」


どうしたんですか……アルレナさん。なんで、俺を疑うんですか?

なんか、アルレナが目を細めて俺をまじまじ見ているのだが?


「いや、何故俺になる……」

「ユウタならァ、ありうる……」

「おい、それはよせ」

「うん。ごめん」

「――ああ。あっ?あああああああああああああああ!!」


やっちまった!完璧にやらかしたああああああああ!!

現在、日は空の真上つまり正午頃の筈――で、マリアとの約束は一時間後だった。

で、俺達が宿を出たのが8時半頃、出店についたのが9時丁度位……。

完璧に遅刻だ。


「どうしたのォ?ユウタ」

「なあ、マリアの事、忘れてた」

「なんだァ、あんな女なんてほっといてほかのお店いこォー出店きて、まだ何にも食べてないィ」

「それも、そうだな……じゃねェ! ほら、さっさと行くぞ途中なんか買ってやるから!」

「ええェー」


――そんな、軽い溜息を出したアルレナを引き連れて俺は、マリアとの待ち合わせ場所『勇者の石像』まで向かった。


「――遅い!! 」

「すいません……」


予想していた通りマリアは、目尻に涙を貯めシクシク泣きながら『勇者の石像』の真下でずっと待っていた。

如何やら、俺に見捨てられたのかと思っていたらしい。


「てか、なんで。俺だけ怒られるんでしょうか?アルレナも同罪の筈……」

「アンタなに抜かしてんのよ、アルレナは可愛いからいいの!」

「は―――ッ!? ふっざけんなよ!? それは、差別と言うものだぞ!!」

「フン!知らないわ!村人の存在で!女神&ライト・ウィッチの私に口出しするんじゃないわ!」

「うるせぇ!バカ女神が!」

「はぁぁ?バカじゃないですぅ~ずっと私って頭いいなと思ってましたぁ~」

「いやいや、かなりの大バカ者ですぅ~てか、涎垂らしながら寝てるお前に女神だと言う自覚あるんですかぁ~?」

「うるさい!私は正真正銘の女神よ!てか、アルレナ!その小汚いヒキニートから離れなさい!!」

「えェーいやだァー」


現在、アルレナは俺腕に抱き着いたまま離れません。

最高です……

そして、その光景を見たマリアが涙を流し俺に罵声を飛ばしてくる。


「どうして!? どうして、アルレナはそんなにユウタの事を?」

「好きだからァ」

「え―――……?この、キモオタを?」

「うん」

「アンタ、アルレナに何した?」

「なんも、してねぇよ!!」

「嘘よ!! こんな、可愛い子がユウタなんか惚れるわけないわ!!」

「いやいや……誤解にもほどがあるぞ」

「そだよォー私が好きになったのォ」

「いやあああああああ!! 私のアルレナがああああああああ!!」


突如、マリアが大声で叫びだした。――そんな、マリアを見たアルレナは顔を顰め若干引いている様だ。まあ、当たり前だ俺も正直言って引いている。


「うるせえ!マリア!周りの人達も引いてるぞ」

「ねェ、ユウタこの女置いていこ?」

「いやああああ!! アルレナぁぁぁ!! 」

「――ああ、もう朝食は食ったんだろ!? ならさっさと宿戻るぞ!このまま、ここに長居したら迷惑すぎるからな!」


そうして、俺はうるさい女神とアルレナを引き連れて宿への道を進んだ。

途中、色々寄り道したが……。


「ねえ、ユウタ……この、裏道通って行きましょう?すぐ宿につく筈よ?」

「まあ、俺もそろそろ限界だからな……いいか。いいよな?アルレナ」

「うん……ユウタが行きたいならァどこでもいいィ」

「わかった」


――なんか、物騒だな。昼なのに薄暗く肌寒い

それに、狭く人二人同時に通ったらつっかえそうだ。


「な、なあ。やっぱり止めないか?ここ通るの」

「まさか、怖いなんていわなでしょうね?」

「こ、怖くなんてねぇーよ!」

「ユ、ユウタ……怖いィ」


そう言って、俺の腕に思いっ切りアルレナが抱きついてきた。

無論、ロリコンと化した俺――抱きつかれて悪い気はしない。

少々怯えている俺とアルレナに対し、マリアはずんずん薄暗い裏道を進んでいく


「さあ、早く!」

「あ、ああ」


そして、数分後。俺とアルレナ名前を進むマリアが急に足を止めた。


「お、おい?どうし――」

「――静かに!」


そう言うとマリアはある所を指差した。そこには、黒いマントを着たがこそこそと話している。

俺とアルレナとマリアは、そいつらの話に耳を傾けると――。


「「おい……あの娘、ちゃんと奴隷商人に売っただろうな?」」

「「ああ、心配ねぇ。40ベルでしっかり売れたぜ」

「「そうか、親分に報告しなくちゃならねぇからな……ほら行くぞ!」」

「「ああ」」


――いま、奴隷商人って言ってたよな?

さっき、服屋のアローラさんが言っていた。犯人じゃないのか?

でも、親分とかなんとか言っていた。何らかの組織なのだろうか?


「ねえ……ユウタ。今、私達ヤバイの見ちゃった?」

「ああ、かなりヤバイぞ……」



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