第九話 「新しい仲間 下」

「それで、アルレナ。あなたの役職は?」


気の緩んだ表情で、魔王軍幹部(元)――アルレナに役職を聞いたのはバカ女神であった。


「はいィ。竜使いですー」

「おお!! 私と同じ最高ランク役職じゃない!歓迎よ!大歓迎!!」

「おいおい……待て待て、俺抜きでトントン話を進めるなバカ女神」

「はァ――ッ!? バカ女神なんて、最弱職の村人に言われたくないですぅ~」

「いやいや、その最弱職の村人に知能負けてるとか馬鹿としか思えないですぅ~」

「うるさいわ!この世界は強さで決まるの!つ・よ・さ!! 」


コイツ……俺が村人だからって……


俺とマリアのいさかいを聞いていたアルレナは、顔の表情を拒めている。

理由は分からないが、多分――俺とマリアが仲良さそうだから?かな?

――まあ、犬猿の仲と言うしな。そう見えても仕方ないだろう……特に、


「あ、あの――そろそろォ。いいですかねェ!?」

「どうして、どうして。アルレナは怒ってるの!?」

「フン! 知りませんよォ!! さあさあ、ユウタ。早く朝食に行きましょォー」

「待って!どうして!私、アルレナに嫌われたぁぁぁ!!」

「うるせェ!マリア!また、お隣さんに怒られるだろうが!!」

「そんなの、どうだっていいわ!! 私は、アルレナと仲良くしたいのお!!」

「知るか!!――ほら、さっさと宿出る準備しろ!」

「はァーい」

「まって!アルレナァァ!!」


――その後、部屋のドアを開けると隣さんであろう。2メートルはあるごついおっさんが、ドアの前に芋っていて。約一時間たっぷりと怒られました。


それも、俺だけ……。


なんで!?



※※※※※※※



「はぁー何故、俺だけ怒られなきゃならん……」

「まあまあ、いいじゃない。もう済んだことよ!」


――なんか、他人事で言ってる馬鹿がいるんだが?

お前のせいでもあるからな、


「おい、お前もやらかしてる一人だからな」

「えぇ? 知らないですぅ~」

「おい、お前。ころ――じゃなく……殴るぞ」

「ねえねえ、いまユウタとても酷いこと言おうとしなかった?」


目を細めて、尋問でもするかの様にマリアは俺を睨んでくる。

それに対し、俺は……


「言おうとしてない」


――笑顔でしらばっくれた。


「ユウタァ。早くいこォー」

「ああ、わかった」


アルレナは俺の左裾をつまみ急かす。

――如何やら、相当お腹が空いているみたいだ。

まあ、当然と言ったら当然か。なんせ、昨日の朝から何も食べて無いからな。

そして、俺とマリアとアルレナは街の中心に位置する出店を目指す。


この街は、毎朝。街の中心に位置する『勇者の石像』という広場で出店が沢山、出ておりそこでは、食べ物、洋服、ポーションなど、多彩な品が出品されている。


その場所が、『勇者の石像』と呼ばれている理由は広場の中心に『初代勇者の石像』が飾られているかららしい――。


「ねえねえ、ユウタ。このスープ美味しいそうよ!これを食べましょうよ!」

「ユウタユウタ、この洋服可愛いですゥ! 買ってくださいィ!」


――なんだろう……幼稚園児二人を連れ歩いている気分だ。


「あああ!二人同時に話すな!」

「私がさきよ!」

「いや!私がさきィ!」

「うるせェ! ほら、金やるから好きな物買ってこい」

「あら、ユウタ太っ腹ね。じゃあ、行ってくるわ!」

「ああ、そうだ! 待ち合わせは一時間後の『勇者の石像』前だー!」

「分かったわー」


そう言って、マリアは人の中に消えていった。

迷子にならなきゃいいのだが……って!俺は、親か!


「で、アルレナは行かないのか?」

「うん、ユウタと一緒にいるゥ……」


なんだろう、アルレナの表情が柔らくなっている。

あの、バカ女神が消えたからだろうか?


「それじゃあ、さっき買いたいって言っていた服買うか?」

「うん!!」


ヤバイ……俺は、ロリコンじゃないが。

クッソ可愛い――……。


――そんな、俺の心境はよそにアルレナは満面の笑みで俺を見つめてくる。

こんな、可愛い子が元魔王軍幹部?考えられない……。


「ねェねェ。ユウタ……手繋いでいい?」

「ちょ、ちょっと待て。お前、俺なんかと手なんて繋いでいいのか?お前なら、そこらへんのイケメンならワンパンできるぞ」

「いやァ。ユウタ……がいィ」


やっべえええええええええええええ!!

ヤバイぞ、俺の心がああああ!!

――無防備な俺の心は完膚なきまでに年下の子に乗っとられましたとさ(おしまい)


「わ、わかった」

「ありがとうゥ」


俺の真っ白な手と、アルレナの瑞々しい綺麗な指先がふれ。そして、ゆっくりと重なった。

緊張のあまり、手が震えている俺に対し、アルレナはニンマリとこちらを見ている。


もういいや……ロリコンと言いたければ言え。俺は、ロリコンだ!!


――そして、俺達は先程アルレナが欲しいと言っていた。洋服店の前まで歩いた。


「あ、あの」

「はい!! なんでしょう?」


俺の問いかけに元気よく返事をした彼女は、黒髪で体はほっそりとしており目鼻立ちはとても整っている。アルレナと争うレベルの美女――。


「あ、あのーこの服おいくらで?」

「はい! 13ベルです!」

「分かった、あと。そこのマントも付けてもらえるか?」

「わかりました!!」

「ありがとう」


――そう言って、彼女は慣れた手つきで俺の頼んだマントと、アルレナの服を畳む。


「どうぞ、お品です!」

「ああ、ありがとう」


俺は、懐から金貨一枚取り出し彼女の小さい手にのせる。

それに対し、彼女は驚愕した表情で口を開いたまま固まってしまった。


「この金貨で払ってもらえるかい?おつりは要らない、このお店の繫盛するよう祈るよ」

「あ、ありがとうございます!! 」


ようやく、現実の戻ってきた彼女は慌てた様子で深く頭を下げる。


「いえいえ――」

「――ちょっと!アンタ!うちの娘に何してんだい!」


俺が店を立ち去ろうとした瞬間、未だ深く頭を下げている少女の後ろから如何にも怖そうな女性が姿を現し俺に罵声を浴びせてきた。


「そうやって、お金で女釣って飲み歩いてんだろ? やめてくれ、うちのマーヤに手を出すのは、気持ち悪い」


女性から発せられた発言を聞いたアルレナは、眉間にしわを寄せ敵意を露わにしている。

無論、俺にそんな目的は無かった。只々お店の繫盛の為にチップを渡したに過ぎない……なのに、このババァ……じゃなく、女性は言いたい放題言いやがって。


「この、ババァ、ユウタになんてことォ!」

「やめろ、アルレナ……」


俺は、犬歯をむき出しのアルレナを左手で抑え、その女性に向け口を開いた。


「いやいや、違いますよ。只々のチップです」

「フン! どうだかねぇ。 ここらは、そういうやつ多いからねェ」

「どうかしたんですか?」

「いや、最近……アンタ見たいな手口使って女を物にしたあげく。奴隷商人にい売りさばく輩が多いんでね」


アンタ見たいな手口って……。俺が、実行犯見たいじゃないか……



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