第1章

第一話 「始まりの街 Ⅰ」


「ここは……?」


――俺が目を開けるとそこは街の中だった。

人通りは少ない。建物は、中世の西洋の街に近くレンガや石で出来た家が多い。

まあ、俗に言う。『始まりの街』的な所だろう。

如何やら、本当にしてしまった様だ、《異世界転生》。

その感情と共に俺の気持ちが高まり心臓の鼓動が早くなる。


で。

そんな、俺とは反対で、この女神は足をおり、しゃがみながら手で顔を覆って、何か呟き、うううぅと、泣いている。


「いやだ……酷いですよ神様。ちょっと間違えて二次元オタクを殺しただけじゃないですか……」


おい。今明らかにい女神が言っちゃいけないこと言ったよな。


「おい、大丈夫かー?」


そう言いながら、女神の肩に触れようとした瞬間――。

あ、変な事しようとした訳じゃないからね?ただ、なぐさめようとしただけだからね?


「いやああああぁぁ! 触んないでえええぇぇ!」


死、直前の様な叫び声で抵抗された。

いや、ひどくね?


「おい」

「なによ」

「いや、俺なぐさめようとしただけなんだけど……」

「嘘! 絶対嘘! 私の事見て何か妄想してたんでしょ!」


女神は涙目で、途轍もなく理不尽な事を言ってきた。


「してねーよ」

「嘘よ! 絶対嘘よおおおォォ! うわあああぁぁん!」


一切俺の言葉を信じようとせず。女神はふたた再び両手で顔を隠し泣き叫び始めた。

そんな女神をよそに俺はある事を決断し、口を開いた。


「それじゃあ! 俺とお前は別々の人生を歩もうな! じゃあ!永遠に!」


俺は、人生で一度もした事無い笑顔で女神から離れてゆく。

その行動を見た女神は。


「いやあああああぁぁ! ボッチなんていやあああぁぁ!」


再び、叫んでいる。


周りにいる人達も、何この人。みたいな目で俺達を見ている。まずい、異世界転生そうそう変質者扱いはまずい……。


取り敢えず逃げよう。

俺は女神を置き去りにして、全力で走る。

こんな走ったのは何年ぶりだろうか? なんだか、身体が軽い。如何やら、神様は俺に体力増強チートを掛けてくれた――ッ!?


こけた。

それも、顔面から。


訂正、どうやら俺は本当に現世と変わっていない様だ。

痛い、普通に痛い。

だが、当初の目的は達成したぞあの女から離れられた。

そんなで、安心していたのもつかの間。


「待ってえぇぇ! 一人にしないでえええぇぇ!」


こちらへ涙を流しながら走ってくる金髪碧眼の女――女神。

よく見たら俺は、100メールも走ってい無かった。


「どうして、ついてくるんだよ!」

「うええぇぇん!!」


俺の問いかけに対して、女神は答える事無く泣いている。ただただ、泣いている。


「おいおい。わかった! 一緒にいるから、泣くな!」

「本当?」


女神は上目遣いで、ユウタを見つめる。

あれ? なんか、可愛いぞ。

まあ、だけどな。


「ああ、逃げない逃げない」

「うわあぁぁありがとおぉぉ!」


泣き叫びながら、俺に抱きついてくる。

悪い気分じゃない。あの、膨らみも、ね?


その後、街の外れにある丘まで歩いた。


「そ、それで。名前はなんて言うんだ?」

「えーとー、色々あるのよねマリアとかアストレアとか?」

「じゃー、お前はマリアだ」


俺がこの名前を選んだ理由は、簡単。――ただ、アストレアより文字数が少ないからだ。

それに対し、マリアは目を輝かせながら。


「わかったわ! 私は、マリアよ!」


マリアは子供の様な笑顔を見せた。


「あ、ああそうか」

「それじゃあ、あなたの事はユウタでいいわね?」


うーん、異世界と言う感じがしない名前だが。まあ、親が考えてつけてくれた名前だ、ユウタでいいだろう。


「ああ、ユウタで頼む」

「了解!」

「それと、この世界ってどういう世界なんだ?」

「たしか、魔王が……じゃなく! 喧嘩も殺人も無い平和な世界よ!」


いま、確実に『魔王』と言う単語が聞こえたんだけど。

……どういうことだ?


「おい。魔王がなんだ」

「え、ええ? 何のことかしら? ぴゅーぴゅー」


目を逸らし口笛を吹きながらとぼけるマリア

いや、とぼけるの下手すぎるだろ。


「おい」

「はい、すいませんでした!」


そう言いながら、流れるように日本人の最終兵器土下座をくり出すマリア

そもそも、女神が人間。それも、二次元オタクに土下座とかしていいものなのか。


「で、魔王がなんだって?」

「あのね、この世界は、魔王の手に落ちかけている世界なの。それで、このままだとこの世界の人達全員死んじゃいそうだから、別の世界から勇者連れてくれば? 的な感じになって、でユウタがあの『天使のエレベーター』に来るちょっと前に勇者が異世界転生しちゃって……」

「えーとー、つまり俺は呼ばれる筈もない世界にあんたの間違いで来たって事だよな?」

「まあ、筋はそんなところね」

「……で?」


目を細めて、上目遣いで俺に許しを請うマリアを見下す。

それに対し、マリアは媚を売る様に。


「ま、まあ 大丈夫よ! この世界は、色々な役職があるから! それに、あなたは勇者と違って元々この世界に住んでいた設定だから、他の役職を選べるのよ? 最高だと思わない?」

「ま、まあ……」


確かに、勇者以外の役職を選べるのは有り難い。つまり、魔法使いや賢者とか選べるって事だよな?良く分からないが、利点はあると言う事は分かった。


「で、その役職ってのは何処で?」

「ああ、それならあそこに見える石造りの大きい建物よ。まあ、RPGゲームで言う所のギルドかしら? 酒場もあるし、クエスト設けられるわ」

「ふーん、じゃあ役職決めに行こうぜ」


ド○クエ歴6年の俺からしたら、この世界。余裕かもしれない。

そんな事を内心思いつつギルドまで俺とマリアは足を進めた。



「ここが、ギルドか……」


遠くから見ると、良く分からなかったが真近でみると結構な大きさだ。

そこら辺に立っている家の二倍はある。

その、ギルドの入り口で俺とマリアは立ち止まっていた。


「ええ……そうみたいね」


中からは、ワイワイガヤガヤ聞こえてくる。宴会でもやっているのだろうか?

そしてギルドの木で出来た扉を開けた。中には、魔法使いらしき女性、剣士の様な格好をしている青年、等々がお酒を飲みながら楽しそうに話している。

誰も、俺とマリアに気付いていない。

それをいいことに、俺とアウロラはギルドの端っこを忍者の様に歩き、受付らしい場所まで移動しカウンターの女性に話しかける。


「あ、あのー」

「はい? なんでしょうか?」

「役職って、どうするんですか?」

「あ! 役職を決めたいのですね!」


俺が小さい声で話し掛けるとカウンターの女性はこんな、二次元オタクを変な目で見ず、満面の笑みで微笑んでくれた。

ユウタは小さく頷き。


「は、はい!そうです、俺と後ろにいるマリアを……」


あれ?

さっきまで、俺の後ろにいたマリアがいない。

そして辺りを見渡すと、お酒を飲んでワイワイしていた人達と席を共にしていた。


「皆! いくわよー!」


「「乾杯ー!!」」


マリアの乾杯と共に、周りにいる人達は全員で乾杯をしている。

おい。なめとんかコラ。


――そうして、俺は役職を決めマリアを一人残してギルドを後にした。


あ、役職は『村人』です。







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