Ⅶ
うわぁ~、関係無いけど何か悲惨……と思ってしまった。
「う~ん、何と言うか……」
「だよねぇ、何か悲惨だよねぇ。犯人まだ捕まってないみたいだし……」
あぁ、皆同じ事考えてたんだ。亡くなられた奥様からしたら放っとけ! って話だろうが、ここはゴシップ記事として敢えて楽しませてもらう。
「御曹司の悪運も遂に尽きましたね」
「確かに。結婚した途端婚外子が発覚したり、離婚はしませんと公表した途端奥様が事故死。『お天道様は見てる』ってやつかもね」
私の一言に香津が同調してきた。明日は日本刀が振ってきて死者が出るかも。
「だよねぇ、あの御曹司十代の頃からセックス事情はお盛んだったらしいしねぇ」
「そうなんですか? まぁ婚外子が出てくればそれも納得ですが……十年愛が聞いて呆れますね。それよりも気付かないものなんでしょうか?」
十年も付き合ってきたのなら御曹司の女癖くらいは把握できそうなものだと思うのだが……仮に相当な隠し上手で証拠が見付からなかったにしても第六感は働くはずだ。
「それが十年愛も眉唾ものらしくって、離れてた期間の方が圧倒的に長かったんだって。蓋を開けてみればちゃんと付き合ってた期間って婚約も含めて半年も無いらしいよ」
詳しいなあんた。
「詳しいね、由梨」
「まぁねぇ。ここだけの話、後輩が奥様の同級生なの」
世の中案外狭いなぁ。
「私に話して大丈夫ですか? 仕事上マスコミとは繋がってますけど」
フリーランスの売れてないライターではありますが。
「何処かで絶対漏れると思うけど、黙っててもらっていい?」
「分かりました」
「香津ちゃんもお願いね」
「分かってるって、どこに話すのよ」
仰木大和に話すのは危険よあんたの場合……とは言わないでおく。彼は少年誌担当の編集者のはず、週刊誌とはフロアが違うから接点も殆ど無いだろうと思う。むしろ月刊誌担当の檜山と繋がっている私の方が危険因子である事は間違いない、何せ週刊誌担当の連中とは付き合いもあるからだ。
「例え漏れても私らの事疑わないでよ」
由梨に念を押してる香津、由梨は分かってるって、と苦笑いを浮かべている。
「ただいまぁ……三人一緒なんて珍しいね」
久し振りにミカが早い時間に帰ってきた。私はおかえりと返す。
「ミカちゃん、エセ美談婚の御曹司……」
と由梨が話そうとして、奥様不運だよねと言葉を被せる。
「普通のニュースでもやってるよ、轢き逃げの犯人が御曹司の婚外子産んだ女二人と接点があったんだって」
「えっ? 犯人捕まったの?」
「えぇ、ついさっき速報でそう言ってたよ。事件性もあるとかで警察も本格的に動き出したって」
えっ? 何? この二時間サスペンスドラマみたいな展開は。
「先に着替えてくるね」
ミカはそう言って部屋に入っていく。そう言えば私も取材旅行のスケジュールの事でメールしないといけないんだった。
「麻帆ちゃん、どこ行くの?」
「メールしなければいけない所があるので部屋に戻ります」
「そっかぁ、夕飯の支度出来たら声掛けるね」
由梨の奇跡的な優しい言葉に送られて私も部屋に入った。
それからしばらくして本当に由梨からお声が掛かってほぼ初めてと言っていい位に和やかな食卓となった。こんなのいつ振りだろうか……ミカと二人の時は当たり前の感覚だっただけにこの
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