第8話

 会議室でマイコさんの両親と教員たちが話し合いをしている間、私とマイコさんは校長室でふたりきりになっていた。マイコさんは大人がいなくなったとたん、とめどなく溢れていた涙を止め、居心地悪そうに髪を指に巻きつけていた。

「なんで、先生を陥れるようなことしたの」

「心外ね。襲われたのは私よ?」

「イランイラン、使ったんでしょう?」

 私が彼女を睨むと、マイコさんはくすくすと笑った。

「あいつの婚約者って私なの。それを破談にしたかったのよ」

「……私のため?」

「いいえ、自分のため。アキさんがあいつに幻滅してくれたらいいのに、と思ってね」

「なんで、そんなこと」

「振られたのに、諦めてくれなかったから」

 マイコさんはそう言って、私を見た。

「アキさんはまだ、私よりもあいつのほうが自分の理解者だと思ってる」

「だからなんだと言うの?」

「私はアキさんに好かれたいの。けれど、その方法がわからない。何をしてもあいつ以上にはなれない」

 マイコさんは嗚咽を漏らし、私に泣き顔を見られまいと両手で顔を覆うように隠した。

「ねえ、アキさん。あなたはどうしたら私を好きになってくれるの?」

 大人の前で大げさに泣いて見せていたときとはまるで違う涙に、私はどうすればいいかわからず、ただマイコさんの頭を抱きしめた。

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