雨中空間

コオロギ

第1話 雨中空間

 『空しい』が、空から、天井から、ずどどどどどどっと降ってくる。それはわたしの頭にごちごちとぶつかる。そのたびにわたしの頭は空になり、わたしの目を空ろにした。わたしの目は映像を映しながらも、届ける先を失くしてしまった。

 わたしは、なにものぞめなくなった。のぞめないわたしの頭は、『空しい』すら受け止めることができなくなり、それは、わたしの体に、静かに染み込んでいく。

 やがて、『空しい』をたっぷり吸い込んだわたしの体は透きとおり、するすると流れていった。

 わたしの体はばらばらになり、空へと還り、また、誰かさんの頭上へと降り注ぐ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

雨中空間 コオロギ @softinsect

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ