⑦繋ちゃんは優しくされたいのに
“
人の名前には意味がある。
例えば私の場合だと、人と妖を繋ぐという意味からこの名前を賜った。家系が陰陽師とか占い師とか、そういう系のインチキくさいことを生業にしているのだ。
ちなみに両親はリアルに詐欺師をしている。
「姫、どうされたのですか?」
「おだまり、わらわは口を聞くことを許してないわ」
実際、本当に娘に霊能の力があるとは思わなかったのだろう。両親達も匙を投げた強大な力は『先祖返り』というものらしい。このインチキくさいメガネの男、 “硝酸”がいなければ私は今でも一人ぼっちだった。
どうしてこうも変なヤツらしか私の周りにいないのであろうか、本当に嫌になる。
「気分転換に散歩をしてきてもいいのではないですか?」
「わらわに指図しないで」
除霊がなんだ、結局みんなこの異形の力から逃げて行くじゃないか。あの男だって結局、私の力を利用したいだけだ。
なんの仕事をしてるのかはサッパリだが。
「おーい、猫っご達、エサだぞ〜」
そんな中、近所の公園で猫に餌をやる“お姉さん”を見つけた。声はハスキーで、何よりも綺麗だった。
「ウドさん本当に猫すぎですよね。アパート店のすぐ上なのに」
「いいんだ。俺は猫たちと戯れられりゃ」
「ん、そこにも猫ちゃんいますよ」
気がつけば私は猫の姿になっていた。
『猫みたいに優しくされたい』
その欲望だけが先走りしてしまったようだ。
どうしようかと思いウロチョロしていると、お姉さんはミルクをくれた。
う、ウドお姉さま……。
「ミーミー」
「まだ小っけなぁ、ざわくんミルク持ってるだろ」
「え、試作品用に使うのに〜。水で薄めた方が猫ちゃんにはいいかなぁ」
すごく和やかな雰囲気がそこにはあった。
私が彼を男の人だと気づくのは、もう少し先の話だ。
「ムービーには納めましたね。早く行きますか」
山田さんと黒服さんたちがいたりいなかったりだとか。
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