第10話


リニューアルオープンもあと3日後と迫っていた。

順調に店の準備はできている。メニューも決まったし外観、内観も綺麗にした。

あとは細かい部分の仕上げだけ。


「ねえ。まだおわんないの?」

つまらなそうにこちらを見ながら、彼女が言う。

出会った日から彼女はほぼ毎日ここに来ている。本を読んだり、うろうろしたり自由に過ごしている。


「飛音ちゃんさぁ…毎日来てて飽きない?特に面白いこともないよ?」


「別に特別なことなんていらない。このお店が落ち着くし、優雨のご飯美味しいからいいよ。」


「優雨さん!な?三つも下のお子様が呼び捨てにするなよ笑」


「三つなんてあってないようなもんですー。ガキみたいなこと言わないでよ」


ほぼ毎日くだらないことで言い合う。だが、僕は口喧嘩が得意ではなくいつも言い負かされる。その姿を見て飛音は鼻で笑うのが日常茶飯事だ。


「飛音ちゃん、あのさ「飛音。」

…え?」


「飛音でいい。ちゃん付けとかキモい。」


…人の心を抉るのが上手い奴だ。

キモいなんて高校生に言われるのは初めてだ


「…わかった。飛音。あのさ絵とか得意か?メニュー表をこのブラックボードに書きたいんだけど、こういうのって女の子得意だろ?」


「…当たり前でしょ。貸して」


素早いタッチで書き上げていく。

これは期待出来そうだなーとワクワクしながら出来上がるのを待つ。


「…出来た。」


「おお、早かったな!見せて…ん?」


予想外な展開に頭に?マークが浮かぶ

この独特な絵はなんなんだ?


「…飛音さん。この…たぬき?いや、クマ?はいったい…」


「いや、猫なんだけど。」


これは難題すぎる。俺にはわからない。


「あの…独特だね。ちなみに美術って成績どんなもんだった?」


「…2」


うん。すごい納得。俺の感覚がおかしいわけではないみたいだ。


「…あのー…うん。あ、でも字は綺麗だね!」


「字はって何よ。」


こちらを睨んでくる飛音。

とりあえず周りの猫という名の化け物を消しもじだけにする。


「字が綺麗だからすごく助かったよ。あとは俺が仕上げとくよ」


「ふん。」


少し不機嫌になってしまったが褒められたことが嬉しかったらしくほんの少しだけ表情が和らいだように見える。そういうところは可愛いんだよな…


「あ、手伝ったんだから今日のご飯はデザート付きね。」



…前言撤回。全く可愛げがない。

だが、こんな日々も悪くはないなと思った。

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