第7話


「これは…本?」


なぜか大量の文庫本が地べたに落ちている。

というか、なんで本…?


状況がよくわからず、立ち尽くしていると



「ねえ。」



「!!!!」


急に声をかけられ振り向くと小柄な女の子が無表情な顔つきでこちらを見上げていた


「ねえ。あなた誰?」


「あ、俺はここの新しい調理長兼店長を任されました高山優雨と言います。…君は?」


「ふーん。」


興味なさそうに答え、本が散らばっている辺りにある椅子に彼女が座る。


…いや、ふーんじゃなくて名前言えよ…

と心の中で思っていたことが通じたのか彼女が急にこちらを向き答える。


「…飛音。白野飛音。」


「あ、ありがとう…。ところで君はなぜここにいるの?」


「…ここの店長、私の叔父と叔母で経営しててよく遊びに来てたから。でも地方に行くって聞いて…叔父さんたちに店はあるからいつでもおいでって言われたから今ここにいる。」


「なるほど…。じゃあこの散らばったら本は?」


「暇だしここで1日時間潰そうと思ってたくさん持って来てそこの棚に置いてたら落ちて来た」


俺の質問に淡々と答えてはくれるが目も合わせてくれない。しかも本を読んでいる…


「飛音ちゃん…。本片付けていい?試作品作りたいんだ」


そう言うとバッとこっちを向き歩いてくる

そして目の前に立ち勢いよく胸倉を掴まれる


「!?」


「…お腹空いたからなんか食べさせて」


いや、胸倉掴みながら言う言葉じゃないだろ。この子なんかイマイチ掴めない。


「わかった。じゃあちょっとそこのカウンターとかに座って待ってて」


特に返事をするわけでもなく厨房から出て行く背中を見つめる


「感情がわからない…。しかも本置きっ放し…」


一つため息をつき散らばっている本を片すことにした。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る