第3話 病室奇譚 研究と老人

(寸劇のプロット)病の老人 下田(S) 医師(A)医師(B)


(S)先生、どうしても退院させてください。

(A)こんな夜中に何を言いだすのかね。

(S)金がないんです。

(A)明日、その話、聞きましょう、息子さんとも、一緒に。

(S)いや、もう、この大学病院の研究材料になるのはいやなんです。

(A)まあ、落ち着いて、今、心筋梗塞の疑いの状態にある訳だし、検査は必要だから、行っているんです。

(S)う、うるせい。

(A)息子さんの携帯に連絡して見ます。あなたねえ、わがまま言うんじょないよ。


医師(A)が、部下の医師(B)のアゴで指図する。


(S)息子も言っとる、『そんな検査の金、とうちゃん、どこにあんるんだい。とうちゃんは、研究材料なんだよ、その金、なんで、俺が払うんだよ』もう、死なせてください。お願いします。

どっちみち、人は、早いか遅いかですから・・・


(A)医者に生意気な口を聞くんじゃない、じゃあ、出て行け、今すぐ、出て行け。

(S)えっ、だって、バスないじゃないですか。

(A)タクシーがあるだろう。医師をなめるなよ。

(S)わかったべ、歩いて帰るだべ。

・・・・間・・・・

(B)A先生、息子さん携帯にでないんですよ。

(S)当たり前だ、仕事中だべよ。おらあ、集団就職で東京さ出て来て、今、年金もなくて、息子に世話になって、、食わしてもらってる。この気持ち、あんたらにわかるかっ。


(B)下田さん、出て行っく前に、この書類にサインしてください。医療を受けないと言う、同意書です。


(S)あんたら、それでも、人間か、俺が、道端で死んだら、息子がかわいそうだべよ。バカヤロー・・・・


深夜の静かな病棟に、「バカヤロー」の嘆きの声が虚しく響いた。


——————————————————————————————

後日談

翌日:病棟事務員が福祉の相談窓口があるのを伝えるに来た。

この制度を医師達は、本当に知らなかったのだろうか?





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