進鬼ちゃんのコスプレをする話


※ここで描かれた進鬼ちゃんのコスプレをしている国連軍女性兵士は架空の存在です。公式設定とは特に関係のない、なんかこう公式の進鬼ちゃんっぽいから広報活動の一環で同じ格好してみようか? と上官から命令を受けちゃっただけなのです……!




 ふむ、と先程手渡された衣装を長机の上に広げて感慨に浸る。胴体の部分は実質水着。太腿まで伸びる長靴下と合わせれば露出面積はそうでもないが、粗野蛮骨そやばんこつ極まれど、一応は数えで17のうら若き乙女としては恥じらいの一つも感じてしまう。



(まぁそもそも、私の二の腕や太腿を見て興奮する殿方も少なかろうが)



 太い眉、八重歯がはみ出した口、荒くまとめて後ろに流した総髪。世の婦女子がお洒落に使う時間を勉学と鍛錬に注ぎ込んだ結果であるのだからそれを不服とは言わない。けれどだからこそ他にもっと適任が、それこそ国連軍というのなら私よりも見目麗しい先達にこそこの様な任務に相応しいのではと疑問に思う。



(いや、だとしても。私に与えられた以上、全力を持って遂行するのが正道か)



 古いリノリウムの床、錆の浮いたロッカー、女子更衣室と呼ぶにはやや無骨ではあるが、男性の先輩方が外で着替えている事実を考えれば恵まれている。それに女性の先輩方には評判が悪いが、私自身ここの空気は嫌いではない。


 ざっと制服を脱ぎ捨て、下着姿になる。部屋に用意された姿見すがたみに。歳の割には起伏の少なく、色香の欠片もない体が映って、多少沈んだ気持ちになった。上司の助言に従い洒落た肌着に変えれば少しはマシになるのだろうか?



「ん…… これは、ややキツいか?」



 着込めない程ではないが、用意された競泳に近いインナーはぴったりと体に張り付き締め付けてくる。あるいはこれ位が普通なのだろうか? ダイエットをする程無駄な肉はついていない筈なので、次回があるのならもう一つ大きい物を用意して貰うことも考えたい。



(長靴下はベルトで止めるのか。ううむ、流石に装甲無しでは刺激が強いな)



 インナーと長靴下だけを着込んだ姿は、それこそ競泳水着だけを着込むより妙に気恥しい。自分以外この更衣室には居ないのだが、恥ずかしくなってチョッキを着込む。



(うぅ…… さ、更に恥ずかしいのでは?)



 頬に血が上がる。それこそ今の顔は楓と同じ朱色に染まっている事だろう。一刻も早くこの状況から逃れるため、横に並べてある装甲部品に手を伸ばす。



「ほう、中々これは出来が良いのではないだろうか?」



 兵器についてそう詳しい訳でもないが、この衣装の元になった機体については知っている。06式進鬼ストライクオーガ、自衛隊と国連軍の一部に配備された駆動装甲であり、そしてかつて特殊災害かいぶつに襲われた私を救ってくれた機体でもある。



(コスチュームプレイと考えると変態的ではあるが、まぁ悪くはないか)



 プラスチックで作られた装甲をインナーと長靴下に取り付けていけば、まぁ相応に格好はついて来た。アニメに出て来るヒロインとまではいかないが、それなりの見栄えになっている。



「うむ、これならば人前に出ても恥ずかしくはないか」



 ネクタイを締め、ヘルメットを被れば、06式を少女の形に落とし込めばこうなるであろうと、そういった按配の姿が鏡の中で笑っていた。



「広報活動任務まではあと30分、そろそろ外に出た方が良さそうか?」



 可憐と呼ぶに呼べない無骨さは、間違いなく私には似合っている。私がこうして人前に出たからといって直接誰かを救えるわけではない。けれど万人に分かりやすく軍の活躍を示し、彼らの成し得たことを伝えらことは無意味ではないのだから。


 そんな事を考えながら、私は女子更衣室を後にする。さぁもうすぐ、広報任務ヒーローショーの時間だ。

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