第14話蕐
「ごらんになって、朱月様よ…」
「…あれは?あれは誰ですの?」
「龍王丸様よ、お美しいわ」
「そういえばお聞きになりまして?朱月様と龍王丸様、見事あやかしを倒されたとか」
「まぁ、さすが
「あの容姿に優雅な立ち振る舞い、宮中の女どもが放っておきませんわね」
住まうは才色兼備の大輪の華。
平安の世は、恋こそ優美と考えられていた時代だ。
貴族達はここで恋の駆け引きを楽しむのが常だった。
「…まったく、あの雷獣の件は隠密じゃなかったのか?」
「さぁ?」
「何が『さぁ?』だ。」
龍王丸は呆れ返った表情で朱月を見やる。
朱月の女好きはとどまるところを知らない。
龍王丸自身も美麗な顔立ちに
「お前、まさか
「違いますよ、だったら、龍王丸は連れてこないでしょう」
「どうだか、お前のことだからやりかねない」
「これはこれはようこそのお運びですわ」
よく響く美しい声。
朱月と龍王丸が後ろを振り向くと、そこには扇で顔を隠した女官がいた。隣には二人の女官を従えている。
目元だけ扇から見えているが、その瞳は知的で艶っぽい。
「噂をすればじゃねーか」
「龍王丸が言ったんでしょう?」
「
女官は少し残念そうに尋ねる。
「邪魔などとんでもございませんよ、朝霧尚侍」
その頂点に立つのが
主な役目は天皇の身の回りの世話や取り次ぎである。
「かの
「それは、嬉しい限りです」
朱月は微笑んだ。
「しかし、尚侍自ら歓迎とは思いませんでしたよ」
龍王丸は頭をかきながら言う。
「まぁでも今宵は女房達の部屋で一夜明かすつもりでしたし」
「それでは、私は邪魔でしょう?お暇させていただきますわ」
朝霧はそう言うと裳をひるがえし行ってしまった。
「あれ、絶対怒らせたぞ」
「まさか、大丈夫ですよ、俺の恋人はそんなに弱くない」
朱月はそう呟くと薄紅の唇が妖しげな弧を描いた。
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