第12話微笑

「全く、あいつらはもう少しおとなしくならんのか?剣丸つるぎまる

月明かりに照らされた天皇の住まい。

此処は清涼殿せいりょうでん

その中で脇息きょうそくにもたれかかる人物。

現帝―貞宗さだむね―。

貞宗の手元には水晶玉がひとつ。

千里眼玉せんりがんのぎょくといわれる呪具である。問えばどんなに遠くの景色でもうつす。

玉の中にうつっていたのは、八咫烏やたがらすに追い掛け回されている新月しんげつの姿だ。

「おい、聞いてるのか、剣丸」

「聞いてるよ、貞宗」

そう言って振り返った少年。

真っ白な肌。銀の瞳。妖しく弧を描く唇は薄紅色をしている。春風にたくさんの勾玉まがたまが揺れる。

「ならないよ。なったらきっとあの子たちじゃない」

「まぁな」

貞宗は肩をすくめて笑う。

「おい、影破宮かげはみや

「その名で呼ばないでよ、好きじゃないから」


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