第6話言ノ葉の雷雨
「近頃の雨の被害、どうするつもりか」
内裏。なかでもここは天皇の住まいでもある
声の主は今上帝―
殿上人とは、六位以上の位にあり、清涼殿の昇殿を許された者達である。いわゆるエリートとも言える。
「雨の被害が尋常ではないぞ。民からも不
安の声が出ているとか」
清涼殿には巫女姫以外の八咫烏も集められていた。
「白狐、どうみる」
「おそらく、なにかの妖では」
白狐はおずおずと答えた。
「朱月は?」
「俺も白狐に同意ですねぇ」
朱月の態度は変わらない。
すると、殿上人の一人が朱月の態度に怒りの声をあげた。
「朱月!!貴様、さっきから見ておればその態度!帝の御前ぞ!!」
他の殿上人からも不満の声が出た。
「そうだそうだ!!ただの術師の分際で何様か!! 」
「妖ふぜいが」
朱月はニヤリと笑いながら言い放つ。
「じゃあ、あんたらが何とかしてくれるのか?」
「な、に」
朱月は身に纏った狩衣から檜扇を出すと、殿上人にむかってつきだした。
「俺達にむかって文句を言うのは勝手だ。けど、あんたらが何とかするのか?違うだろ?結局、俺達が行かなくちゃならない」
朱月の瞳はただただ冷たかった。
「大丈夫だよ、どうせもうすぐ白狐の言葉は現実に変わる。ねぇ、
朱月の視線の先には、一人の青年が立っている。
紫をおびた黒髪に本性のわからない美麗な顔。名を
新月は書物を片手に貞宗の前まですたすたと歩み寄る。
前代未聞の行動に殿上人達は絶句している。貞宗の表情は笑っていた。
「朱月、ご名答だよ」
新月はよく通る声で報告を始めた。
「報告申し上げます。占いの結果、今回の雷雨の被害は妖の仕業と判明しました。妖の正体は
貞宗は立ち上がった。
「上出来だ、新月」
新月は跪き、一礼した。
「恐悦至極に存じます」
貞宗は八咫烏を見やるとすぐに命令を下す。
「八咫烏に命ずる。雷獣を討て。…決して生かすな」
「「「はっ!!!」」」
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