花を持たせる
「イイノカ?」
遠くから響く歓声に、肩に止まった相棒がカイの方を見やる。
「ああ」
歓声の向こうに見えるのは、手を振る人々に応える小さな影、人々の生活を脅かす魔王を倒した勇者。
「ダガ、魔王ヲ倒シタノハ」
「俺は、手伝っただけだ」
カイの肩で翼を広げた相棒を、首を横に振ることで黙らせる。
余所者のカイがしゃしゃり出ても、冷たい視線を向けられるだけ。この国で生まれ育ったあの勇者に花を持たせた方が、人々も納得するし、あいつも、……不幸な生い立ちから脱出できる。だから。
風に乗って飛んできた、勇者を歓迎する花の欠片を掴む。自分には、萎れかけたこの花の方が似合う。一人頷くと、カイは、人々の歓声に背を向けた。
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