救国の英雄は、今
街の広場に建つ、馬に乗って剣を掲げる『救国の乙女』の銅像に会釈する。そのまま広場を通り抜けて大聖堂の裏手に回ると、一際花の多い墓標の前に、アキは佇んだ。
「こんなところに現れて、大丈夫なのか?」
低い声に、振り向いて微笑む。
アキの横に立った影、かつては若さのままに剣を振るう部下であったラドは、老齢の騎士団長としての貫禄を纏っていた。対して、自分は。
「『救国の乙女』は、敵の手に落ちて処刑された」
墓標へと顔を戻し、冷静に言葉を紡ぐ。
「ここにいるのは、ただの少女」
「そうだな」
アキの素性を知るのは、今ではこの騎士団長のみ。それで、良いのだろう。穏やかな空気を感じながら、アキは横の騎士団長に微笑んでみせた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。