その本の由来

 異父兄の下宿にはいつも大量の本が散らかっている。その中でも一際目立つのが、紙とは違う手触りの、周りの本よりも一回り大きい本。

「こんな古い本、何処で見つけたの?」

 あきらの質問に、異父兄であるとおるは曖昧な笑みを見せるだけ。

 この小さな町にも本屋や古書店はあるが、こんな、いつも埃を纏っているように見える本は、図書館の書庫ですら見かけない。異父兄はいったい何処で、この本を手に入れたのだろうか? 気になる。重厚感のあるその本を横に置き、大学の課題らしい数式だらけの本を開いた異父兄から目を逸らすと、明は、どうしても気になってしまう異父兄の本の、きらきらと光ってみえる表紙をじっと見つめた。

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