　ニホンという国から来ていた、ルームメイトのアキが使っていた棚には、毎日使う雑多な物と一緒に、掌に乗るくらいの小さな箱が置かれていた。

　犬にしては丸く、アライグマにしては尻尾に縞々が無いヘンテコな動物が蓋部分に乗っている、カラフルな箱。頑丈そうなその箱をアキが開けるところを、しかしクレアは見たことがなかった。

「その箱、中に何が入っているの？」

　一度、アキにそう尋ねてみたことがある。

　クレアのその問いに、アキはぎゅっと口の端を上げて微笑むだけだった。

　箱の中身は何かを知る前に卒業式を迎えてしまい、それっきり、アキとは逢っていない。しかし本当に、あの箱の中身はいったい、何だったのだろうか？

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