『魔導書』の問い

[この『電子レンジ』ってやつ、火を使わずにどうやって食べ物を温めてるんだ?]

 冷凍庫から出して温めた御飯を丼に盛り付けるとおるの斜め後ろで、古ぼけた本の表紙に文字が並ぶ。

「食べ物の中の水をマイクロ波で振動させて温めてる」

[その『マイクロ波』って奴は、『スマートフォン』で遠くに居る奴と通信するときの『電波』とは違うのか?]

「えっと、それは」

 数学を学ぶ徹の知識だけで、好奇心溢れる古の魔導書が発する質問全てに答えることは難しい。魔導書も乗る小さな卓袱台に丼と味噌汁茶碗を並べながら息を吐く。明日、物理と工学の本を借りてこよう。普段と同じ夕食に『美味そうだな』の文字を並べた魔導書に、徹は小さく頷いてみせた。

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