「光」と書いて「かげ」と読む

「ねえ、なんでここ、『光』に『かげ』ってルビ振ってあるの?」

 心底うんざりした顔で古典の教科書を投げて寄越した友人に、心の中で肩を竦めつつ微笑みを返す。

「昔の人は、『影』を『光』の意味で使うこともあったらしい」

 その笑みのままに、章は、古典の参考書に載っていたことをそのまま口にした。

「今でも、『月の光』と言う意味で『月影』を使うこともあるし」

「えっ?」

 あの歌詞、月にできる影のことを歌っているんだと思ってた。友人の言葉に、吹き出すのを堪える。だが、次の瞬間。

「え……?」

 窓際にある自分の席へと戻った友人の姿が、一瞬、夕日に紛れて見えなくなる。

〈あ……!〉

 叫びたくなる衝動を、章は辛うじて押し殺した。

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