届かない

 小さな手を伸ばしても届かない場所にある、金色の文字をひけらかしている背表紙を睨む。頭の中でこんがらがっている問題をすっきりさせるには、あの本が必要、なのに。天井近くにまで本が積み上がっているこの図書室にあるのは、頼りなげな小さな脚立のみ。あの古い脚立を使っても、あの本に手が届くかどうか。諦めに肩を落とした章の横に、件の脚立が滑るように現れた。

「取ってやろうか?」

 この、声は。隣に立った背の高い影に唸り声を飲み込む。ここで、章が勝手にライバルだと思っているあいつに出会すとは。

「ほら」

 あいつなんかに、助けられるなんて。火照った頬を無視し、章は差し出された本をひったくるように受け取った。

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