路面電車に乗って

「今日は、どっち?」

「『産業』だから、五番の電車」

 はしゃぐ妹の声に、まだ電車がいないホームを指差す。

 できつつある列に並ぶ人々は、皆、大荷物。

「今日、あのサークルさん居ると良いな」

 列の後ろに並ぶ妹の声を聞きながら、背中の重みを確かめる。頒布物も、敷布も、ディスプレイ用の小道具も全て、昨夜リュックサックの中に突っ込んだ。表紙に絵がないオリジナル小説は、便箋やグッズばかりの地方の同人誌即売会では見向きもされない。それでも、同人誌即売会にサークル参加してしまうのは。

「あ、電車」

 車に並走しながらホームに滑り込む古い車両に、妹が微笑む。

 小さく肩を竦めてから、私は妹に続いて路面電車に乗り込んだ。

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