証拠隠滅ならず

 調理器具は全て片付けた。食器も、綺麗に洗って食器棚の中。部屋中に消臭剤を振りまいたので匂い対策もばっちり。証拠は全て腹の中。これで、同居人には。

「……あきら

 だが。帰宅した同居人の第一声は甘くなかった。

「私が居ない間に美味しいもの食べたでしょ」

 何故、ばれた?

「章、すぐ顔に出るから」

 ダイエットは私が勝手にやっていることだから、章は気を遣わなくて良いのに。ぷっと膨れた同居人の頬に、小さく頭を下げる。自分の欲望には忠実でありたいが、頑張っている同居人の邪魔はしたくない。感情を顔に出さない練習をした方が良いのだろうか? 冷蔵庫からダイエット用のドリンクを取り出した同居人から、章は小さく顔を背けた。

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