遊泳禁止

 松林の向こうに見えた小さな人影に、足が止まる。

 魚釣り用の砂浜で海を見ているのは、髪の長い、章と同じくらいの背格好の子供。小学校では見ない顔だから、おそらく、村の老人の家に遊びに来ている子供。

「ここは、遊泳禁止」

 一息で林を出、見知らぬ子供の前に立ち塞がる。

 ここは、河口に近い。魚は釣れるが、溺れた子供も多いと親から聞いている。

「泳ぐなら、向こう」

 手作りの釣り竿を横に振り、遊泳許可が出ている砂浜の方を指し示す。目を見開いた見知らぬ子供の、お腹を隠していない水着姿に、章の頬は何故か熱くなった。

 章の指示に、目の前の子供が小さく頷く。

 去って行く子供の、揺れる長い髪に、章は無意識に首を横に振っていた。

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