鍵と閂

「『閂』が、裏切るとはな」

 豪奢に飾られた、王の謁見の間へと続く扉の前。鎧兜で身を固めた大勢の兵を伴って現れた大柄な影に口の端を上げる。

 扉を守るラドに剣の切っ先を向けているのは、王宮の城門を内側から守っていたはずの親友。おそらく、平民であるが故に貴族出身のラドのように近衛隊に抜擢されなかったのをずっと恨んでいたのだろう。

 胸を過った冷たさに、首を横に振る。この親友に、剣術試合で勝ったためしがない。悪政を重ねる王は、討たれた方がこの国のため。だが。……自分にも、自分の意地がある。

「ここの鍵は、そう簡単には渡せない」

 その言葉と共に、ラドは、親友の横から飛び出してきた兵をその剣で鎧ごと叩き斬った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る