キイロノウサギ

 私が幼い頃暮らしていた小さな街には時折、架空生物を作ってくれる職人が現れることがあった。

「ドラゴン作って、おっちゃん」

「ペガサスがいい」

 集まってきた子供達の要求に応じて、職人はその節くれ立った指を振る。何も無い空間から現れた、物語でしか知らない生物のミニチュアを大事そうに抱き締める子供達に、職人は常に笑顔を見せていた。


 私も、一度だけ、職人に架空生物を依頼したことがある。

 ……母が捨てた、私の大切な友人だった黄色の兎の縫いぐるみを。

 職人が作ってくれた黄色の兎は、現在も、私の部屋で小さく跳ね、眠りにつく私の頬を温かい鼻先でつついてくれる。


 縫いぐるみと同じ手触りの、消えることのない幻は、私の心の支え。

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