窓を閉めろ
窓を閉めろ、奴が来る。
「本当に、来るの?」
窓の桟に短い指を掛け、上目遣いに外を見やる妹に、小さく頷く。
年に何度か訪れる、神の加護が無くなる日。その日に現れ人を拐かすという「奴」のことは、大人達の話でしか知らない。だが、恐ろしいと大人達が言っているのだから、きっと怖いものに違いない。そう、カイは思っている。
一方、妹の方は、大人達の話も、今夜やってくるという「奴」のことも、怖れてはいないようだ。
「窓、閉めよう」
「やだ」
窓から離れるよう促すカイに、妹は決然と首を横に振る。とにかく、窓を閉めなければ。焦りを覚えた、その刹那。
風が、黒く染まる。
次にカイが見たものは、風に煽られる壊れた窓、ただそれだけ。
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