水底に似た
積分記号から逃れるように、顔を上げる。
夏に近い授業中の教室は、誰もいないのかと思ってしまうほど、音が無かった。
水の底は、このように静かなところなのだろうか? 再び、ぐにゃぐにゃと蠢く不可解な式に目を落として、息を吐く。プリントの上を滑る筆記具の音すら、聞こえてこない。
「はい、そこまで!」
微笑もうとした矢先に響いた先生の声に、周りは一気に水底から普通教室へと戻る。
「答え合わせ、ちゃんとしろよ」
水底で書いていた式と、黒板に先生が大きく描くぐにゃぐにゃの数式とを見比べ、間違った箇所に赤を入れる。
あの水底は、結局のところ何だったのだろうか? プリントに滲んだ赤色に、私はそっと首を傾げた。
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