渡されたもの、渡すもの

 横から覆い被さってきた影を、手の中の刃で叩き切る。

 これも全部、あいつの所為。ズボンのポケットの中にある小さな包みを確かめながら、次々と現れる影を叩きのめす。いい加減、消えてほしい。そう思った次の瞬間、深紅のスカートが翻った。

「ありがとう、晶」

 一息で影達を消し去った笑顔に、渡された包みを返す。

「君に似合うと思ったんだけど、解呪に手間取っちゃって」

 晶の幼馴染み、優の手の中で、包みの中の粘土球が宝石付きの指輪に変わった。

「男性から女性に渡す、で、間違って、ない、よね」

 そこは、合っている、けど。全ての文句を心の奥底に押さえ込む。晶の左薬指に冷たい金属を嵌める優の細い指に、晶は小さく笑った。





Twitter300字ss お題『渡す』

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る