散歩する傘
図書館から出たところで、降る雨に気付く。
傘、持って来て良かった。息を吐いて、傘立てに目を移す。しかしながら。傘立てを何度見回しても、傘が見当たらない。どこにでも売っていそうな黒い傘でも、自分の傘。見失うことはない。と、すると。
呻きを、何とか飲み込む。あの子は好奇心が強い子だから、おそらく。止みそうもない雨に肩を竦めると、尤は小さく指を鳴らした。
すぐに、左手に赤い傘が現れる。
「俺を呼び出すんだったら、あいつ、持って行く必要無かったんじゃ」
赤い傘の呆れた言葉に、尤は小さく首を横に振った。
次の日。
赤い傘の横で眠る黒い傘に、微笑む。
散歩は、楽しかった? 尤の問いに、傘は小さく頷いた、ように見えた。
Twitter300字ss お題『かさ』
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