地に縛られしもの

 薄明るい、それでもどこか寒気を感じる侘びしい道を、ひたすら歩く。今は骨と皮だけになってしまった手足に絡みつく重い空気を感じながら、尤は気配だけで目的地を探した。……ここだ。静かに立ち止まり、口を開く。尤が唱える、尤の家に代々伝わる呪文を聞いた、周りを漂っていた湿り気を帯びた空気が苦しそうに震える、その様が、皮膚のあちこちから伝わってくる。痛みにのたうちながらも、それでも尤は、呪文を唱えることを止めなかった。地に縛られたものたちを、解放する。それが、尤の家の裏の職務。

 諦めたように、重い空気が尤の周りを離れていく。その気配の中に、親しみのあるものを感じた、尤の瞳から、小さな涙がこぼれ落ちた。





Twitter300字ss お題『地』

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