画面の向こう

 画面の向こうで翻る鮮やかな袖に、微笑む。

 『卒業式』だから、どうしても着たかったんだ。楽しげなボイスとともに送られてきた映像は、直接会ったことのない、教え子のもの。

 生活の全てがインターネットを通じて営まれる時代。もちろん学業も、オンラインで事足りる。学びたいと思う時に学び、学び終えれば卒業。入学式や卒業式は、過去のもの。それが寂しいと思う者もいるのだろう。別モニタに映る、昔の教室を模した画面には、振袖袴姿のアバターがいくつも見えた。

 画面の向こうにいる者達のうち、生身の人間は何人いるのだろうか? そう思い、唇を歪める。そう言う、自分だって。思考一つで閉じた画面に、『教授』は小さく息を吐いた。





Twitter300字ss お題『子』

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