第3話 「見たものが全てなの。」

「私は、あなたが3年前に考えたキャラクター、九重メイよ」

ちょっと何を言ってるのかわからない。ちょっとどころかまったく全て何もかもがわからない。確かに、九重メイは俺が中学生の頃に考えたキャラクターだけど。よく妄想の中でストーリーを描いてはいたけれど。

そのキャラクターが目の前にこうして現れるのはおかしい。

あ、これは夢なのかな。明晰夢ってやつだ。夢の中で自由に思考したり、行動できたりするやつ。

「夢じゃないわよ。」

びくっ。

「私は心の中も"見る"ことができるからね。あなたがそういう風にキャラ付けしたでしょう?」

本当に意味がわからない。幻想が見えているのだろうか。妄想癖が悪化しすぎて、幻視が始まってしまったのだろうか。

「幻視でもないし……。というか無言になるのやめてよ。」

「え?ああ、ごめんなさい」

「そうやってとりあえず形だけ謝るのは悪い癖だからやめなさい。」

びくっ。

「"みる"専門家だから最初に言わせてもらうけど」

「見たものが全てなの。いくら説明がつかないことでも、実際に起こったことは認めなければいけないのよ。科学も観測から始まるんだからね。」

理系を志す身として、受け止めるべきなのだろうか。

「まあそんなこと言われても納得はできないでしょうから、ちょっとは説明してあげるわ。」

そうして、自称、私の創作キャラクター"九重メイ"は話し始めた。

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異世界転生なんてありえない! さっちん @Tomone_Ameno

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