第2話 「本当に覚えてないのね。」

「おかえり。」

 自分ひとりだけなはずの家に、部屋に、知らない女の子がいる。なんだろうこれ、状況に頭が追いつかない。なんだこれ。不法侵入者?強盗?親の再婚相手の娘とか?いや、そもそも離婚してないし。

「‥‥。え、えーっと、あ、あなたは?」

 声が上ずってしまった。

「はぁ‥‥。本当に覚えてないのね。」

どこかであったことがあるのだろうか。確かに、人の顔を覚えるのは苦手だと自負しているから可能性はなくはないけど。

「ちょ、ちょっと待って!」

必死に思い出そうとしてみるけどやっぱり思い出せない。

「もういいわ。やっぱりその程度だったってことよね。」

「……。」

何も言い返せない。人のことを思い出せないなんて最低だ、また自分が嫌いになった。

「『"みる"ことに関してならなんでもできる』なんて能力を与えておいて、後から血界戦線っていう漫画のキャラと丸被りだったことを知ってしまったんだものねー!そりゃあ忘れるわ!!」

んっ?んんっ??

「なんで俺が昔考えた小説のネタ知ってんの!?」

めっちゃはずい。しにたい。

「そりゃあだって、」

『私はあなたが考えたキャラクターだからよ。』

「は?」

は?

「わかってないみたいだから、はっきりと言い直すけど。」

「私は、あなたが3年前に考えたキャラクター、九重 メイよ」

ついに私はおかしくなってしまったのだろうか、神様。

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